コロナ下における海外での地域研究学会研究会の試み
2006年3月のJAMSニュースに「クアラルンプール滞在者による研究会について」と題し、マレーシアでの日本人による海外研究会について紹介したが、その前年までマラヤ大で海外研究を行っていた私の帰国後も、2009年初まで日本マレーシア学会(JAMS)クアラルンプール地区研究会として、海外生活、研究の情報交換を兼ねた日本人滞在者による集まりが続いていた。
2021年はキャリア最後の長期海外研究ということもあり、コロナ下での渡航手続きに手間取りつつ、11月からマレーシア首都郊外のカジャンの華人系私大で海外研究を始めることができた。この間の事情は、東南アジアが2022年4月前後のアフターコロナに移行する直前2月のNNAマレーシア版に「ウィズコロナ下の在外研究生活」として記録している。
前回マラヤ大での経験から、情報交換を兼ねた日本人滞在者の集まりの必要性を痛感していたが、行動制限で帰国者が相次ぎ、短期でもビザ必須で入国は難しく、首都クアラルンプール周辺と言えども、研究目的で渡航して来る日本人は皆無に等しかった。それでも、長期滞在者に目をつけ、現地日系通信社の記者や現地大学の日本人教員らを中心に、前年末から州のあいだの国内移動が自由になり、少しずつひとの動きが目につくようになった2022年2月に、マラヤ大でマレー人にマレー語を教えている佐藤先生に、JAMSの元になったマレーシアでの日本人研究会参加を含む、これまでの研究の道筋をお話しいただくところから始めることができた。情報発信にはFacebook <https://www.facebook.com/groups/jamskanto2kl> や東南アジア学会と日本マレーシア学会のメーリングリストを使い、毎回オンラインミックスとして日本時間も意識するなど、日本からの参加を呼びかけた。
マレーシアからの中継は、窓外を映るようにするなど工夫したが、2年以上フィールドに入れない研究者が多く、空気感を楽しんでいただけたようで、オンライン含め20名以上会して盛況だった。時間を超過して質疑が続き、対面参加は数名だったが、熱気を感じることができた。研究会後に現地参加者は懇親に繰り出し、議論のつづきを楽しんだ。その後も発表者探しには苦労したが、マレーシア日本研究学会(MAJAS)と広報協力したり、日本語で発表できるマレーシア人を発掘するため、マレーシア人日本語上級者のJapanese Tableを兼ねるなどした。
以下の通り、2月に2回、3月から7月に1回ずつ、都合7回の研究会を開催することができた。会場を提供してくれた新紀元大学学院国際教育学院や国際交流基金クアラルンプール日本文化センターに感謝したい。
会合一覧 (所属はすべて開催当時、敬称略)
2022年2月5日(土)15時-16時半(日本時間は+1時間、以下同じ)新紀元大学学院国際教育学院(MRT/KTMカジャン下車)・オンラインミックス
佐藤 宏文(マラヤ大学言語学部)「私のマレー語研究の道筋」
2022年2月26日(土)15時-17時、新紀元大学学院国際教育学院・オンラインミックス
伊藤 祐介(アジアインフォネット取締役兼編集長)「英領マラヤに20年住んだ祖父のはなし」
2022年3月14日(月)10時-11時半、オンライン(Google meet)
酒井 和枝(クチン日本人会)、サラワクの日本人ー移住、史跡、観光
※国際交流基金クアラルンプール日本文化センター(JFKL)、マレーシア日本研究学会(MAJAS)主催を広報協力
2022年4月23日(土)14時半-16時、国際交流基金クアラルンプール日本文化センター(ミッドバレーメガモール・ノースポイント内)・オンラインミックス
シア・リーリン(作家、翻訳家)「マレーシア多言語社会の中での言語学習ー個人的な体験」
2022年5月21日(土)14時半-16時、国際交流基金クアラルンプール日本文化センター・オンラインミックス
久貝 京子(国際交流基金クアラルンプール日本文化センター文化事業部 部長補佐)「マレーシアの最近の文化芸術事情ー映画関連を中心に」
2022年6月11日(土)14時半-16時、国際交流基金クアラルンプール日本文化センター・オンラインミックス
太田 隆二(政府公認MM2H代理店・ロングステイアドバイザー)コメント:小野 真由美(ノートルダム聖心女子大学)「住みたい国14年連続世界第1位マレーシアー現地で見たロングステイの変化
2022年7月30日(土)14時半-16時、 新紀元大学学院国際教育学院・オンラインミックス
レオン・ユットモイ(ノッティンガム大学マレーシア校)「マレーシアの盆踊り大会への異論について」
初出:東南アジア学会会報117、2022.11
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