「やりたいことは何?」という問に
よく聞かれる質問の中で、答えに窮するのは「今後のビジョンは?」「やりたいことは何なんですか?」というもの。
「相手の期待にお応えしなきゃプレッシャー」を勝手に感じるタイプの私としては、今のままじゃダメかな?何て答えたら相手が納得してくれる?どういう意図で聞いている?と考えながらも「現状維持しつつ、琴線に触れることがあったら適宜飛び込んで行くスタイルで」みたいな、よく分からない答えをしてます。
この答えの背景には、私なりの「やりたいこと」の2つの幹があります。
(1)現場で頑張っている人たちの成果を伝えたい
(2)自分を満足させる仕事がしたい
(1)現場で頑張っている人たちの成果を伝えたい
私は、中学生の頃に新聞に取り上げられていた、ある研究成果を見て化学に興味を持ち、研究者になるべく5年制の「高専」に進学しました。中学の頃に最も得意だった科目は国語、次が理科。一方数学はダントツで苦手、という状況だったので、5年間もどっぷり「理系」の勉強をする学校に進むことを周囲はやんわり反対していましたが、我が道を行ってしまいました(他は自己紹介回に譲る)。
化学の勉強は面白かったし、料理好きの私には手順を考えながら効率的に動く実験も楽しかったです。でも、数学は苦手なままで計算などには苦労したし、研究の理論的な組み立ても、私よりもっと向いている人がいることも分かりました。
「それなら、みんなが頑張って出した成果を世に広める人になろう」
そう思って、数十の専門誌を中心に抱える出版社に記者として就職しました。今所属しているのは、臨床医向け雑誌編集部です。読者の役に立つ情報であることは大前提だけれど、「現場で頑張っている人たちの成果を伝えたい」と思っています。
ちなみに、いろいろと自由にやっているように見えるからか、「フリーにならないの?」という質問もよくもらいます。
今、私が所属している媒体は、臨床医向けの業界誌で、広く一般の人が読むものではありません。そのため、「そんな狭い世界で書いているのは、もったいない。もっとたくさんの人に読まれたくないの?」と思ってくれて、上の質問をしてくれるようです。
業界誌の面白さは、その業界にいる比較的多くの人が読んでくれていることと、どの読者の役に立つ記事を書けばいいか、書く側もターゲットを定めやすいということです。ざっくりとした流れの解説だけでなく、明日から役に立てる機会が多いように感じています。医療では特に問題となる「情報の非対称性」も少ないため、必要以上に煽ったり面白おかしくしなくていいのも好きなところです。
個人で書くブログであれば、影響力は持とうと思って持てるものではないし、そもそも持たなければならないこともありません。でも、メディアは相手に時間をいただいて、ほとんどの場合は報道として無償で取材させてもらいます。相手の労力に見合う影響力がなければならないと考えているため、業界内の多くの人にアプローチできる媒体に所属していることは、意味があることだと思っています。
(2)自分を満足させる仕事がしたい
一方、「自由にやっているように見える」のも実際に自由にやらせてもらっているので本当です。今のところ外部での活動を報告して、上司にNGを出されたことがありません。本当に手伝いたいプロジェクトがあってNGを出されたら会社への所属を考え直すかもしれないし、人生をかけて自分がやりたい事が現れて今の仕事をやめなくてはならなくなったらスパっとやめるかもしれないけれど、これまでは考える局面もなく好きにさせてもらっているので、「現状維持しつつ、琴線に触れることがあったら適宜飛び込んで行くスタイルで」という答えになっています。
自分を満足させる仕事がしたいと考えるのは、母親の影響もあります。子どもがいないときはバリバリ働いていた私の母は、3人の子どもを持つことになって仕事を減らさざるを得なかったようで、たまに講演したり、家でおもちゃの開発アイデアを練ったりという短時間で済む仕事のみにシフトしていました。もっと仕事がしたいとか、恨み言を聞いたことはなかったけれど、小さい頃の私はそんな母の姿を見て「もっと働きたかったんじゃないかな」と思っていたのでした。
仕事をするようになった私に、母は仕事を続けろとも辞めるなとも言わないけれど、「辞めたくないのならば辞めない方がいいよ」と言ったことがありました。私は私の人生を生きた方が母もうれしいかな、という気持ちもあって、やりたいことをやりたいようにやっています。
内容としては、今は書く仕事以外にしたいことが考えつかないし、お手伝いしているプロジェクトにも満足しているので、これをめいっぱいやっていけたらと思っています。
ただ、先日、「食べたことのない食べ物が好きな食べ物になることはない。同じように、やったことがないことが『やりたいこと』になることはないよ」と友人に言われました。考えつかないのではなく、選んだ上でやっぱりこっちがいいな、という納得感があった方がいいのかもしれないし、食べたことのない食べ物にもっと挑戦していった方がいいのかもしれないな、と思って、noteを始めたりしています。
▲とうもろこしの芯ごと炊き込みご飯。もち米を混ぜて出汁で炊く