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益村のエッセイ マスッセイ#2「シャンデリアにまつわるエピソード」

僕は東京シャンデリアというお笑いコンビに所属している。

だいぶゴキゲンなコンビ名で恐縮だが、なんとなく体に馴染んできた感じがある。

シャンデリアに詳しい賢明な読者諸君はおわかりだと思うが、シャンデリアというとお屋敷タイプと実家タイプの2つがある。今回は実家の居間にあるちょっと気取った照明を主にシャンデリアと呼ぶことにする。

↑こういう雰囲気のやつ



今回はそんなシャンデリアの話。


昔、我が家の実家にもシャンデリアがあったが、


突如PS2が激突し我が家のシャンデリアは粉々になった。



中学2年生の頃だった。中2というと、当然中学スクールカーストの最底辺に所属し、当然帰宅部(サボりすぎて中1で美術部をクビになっている)で、アニメとニコニコ動画がジャスティスな平均的なキモオタであった。

類は友を呼ぶ。

あの日はキモオタが僕含めて4人集結し、我が家のパソコンを囲み、ニコニコ動画で東方Projectだの陰陽師だのを見ていた。メイプルストーリーをやったり、これが平均的オタク中学生の放課後であり、部活やカラオケなどのアウトドア行事は言語道断である。

この日、親もいないしリビングでまったりしていた。

陰キャメンバーの一人、まーちゃんは、そういうオタク・コンテンツに詳しかった。

とにかく機械に詳しかった。

そして身長が大きかった。

学年で一番か二番かくらい大きかった。

まーちゃんは、よく「この前、警視庁のホームページをハッキングした。」と誇らしげに僕らに語っていたが、今思うと、なぜだか涙が出そうになる。

まーちゃんは、この日、我が家に生のPS2を持ち込んでいた。

スクールバッグに生のPS2が入っていた。


コードもコントローラーもついてない、生のPS2。

こういうゲーム機を分解して、中の基盤を眺める。俺はこういう身近な機械も簡単にバラせちゃうんだぜ、という技術をいつも見せつけてくれたのが、彼であった。その行為に一体何の意味があるのか分からないが、今思うと、なぜか涙が止まらなくなる。

その日、まーちゃんは機嫌が良かった。

よく笑っていた。

テンションが高かった。

好きなキャラのグッズが手に入りとても嬉しかったという話を、それはもう有頂天になりながら、その時の様子を再現してくれていた。

「もうそれはウホホーイって感じだったよ」

それが彼の最後の言葉だった。




何を思ったのか、まーちゃんは、
PS2を頭上に掲げながら、飛翔した。

そのグッズをなぜかPS2と見立てて、有頂天になった瞬間を再現してくれていた。




「もうそれはウホホーイって感じだったよ」

「ウホホーイ」
の瞬間、





パリーン、では表現できないほどのガラス破壊音が鳴り響いた。

僕らの頭上にあったシャンデリア的な照明が、木っ端微塵に炸裂した。

まーちゃんが掲げたPS2が、照明に激突したのである。

まーちゃんがジャンプした場所すなわちシャンデリアがある場所から僕らのいたところはズレていて、

まーちゃんもジャンプしながらそこを通り過ぎたので、
誰もガラスの雨を被ることはなかったが、

とんでもない量の破片が居間に散乱した。

電気がついてなくて、本当によかった。

そこにいた陰キャたちのテンションは、そのガラス片のように粉々になった。





その後、


僕の母が帰宅し、



まーちゃんの親が招集された。
まーちゃんのお兄さんもついてきた。

夕方、そろそろ電気をつけたい時間だが
薄暗いことを余儀なくされた我が家のリビングで、


まーちゃんは、

泣いていた。




僕が見るまーちゃんの初めての涙は、

PS2で僕の家の照明を破壊したための涙だった。


なぜまーちゃんが、飛翔したのかは分からないが、

「テンション上がっちゃって...」

と釈明していた。


まーちゃんは、もちろん益村家を出禁になった。




そういえばプレステが、PS5まできた。
3になっても、4になっても、

プレステと聞くと、この事件を思い出す。

全く連絡をとってないが、まーちゃんのことだ。PS5はゲットしているだろう。


まーちゃん、最新のテクノロジーを体験するのはいいけど、


俺んちのシャンデリア破壊した事は忘れるなよ。


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