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軒下の男性

霊体は粒子だと思うことがあります。

魂には重さがあるそうですが、霊体が粒子であれば重さがあって当然でしょうし、光ったりモヤがかかったりすることの理由にもなるかと思っています。

幽霊が湿気があるところに溜まるのに、水も空気も流れる場所が苦手なのは、そんな理由だからかもしれません。



先日、実家の洗濯の干し場を替えました。

ベランダまで洗濯物を運ぶのが辛くなったと叔母が言うので、1階の洗濯場のそばに場所を作ることになりました。


洗濯場横の勝手口を出たところは、軒下が広くなっていて、布団を干せるくらいのスペースがあります。


私は母と、使っていなかったそこの草を抜き、枯草を掃き、タタキを水洗いして使えるようにしました。

ある程度仕上がった所で私が物干し台を置き、あとの細々したものは、母と叔母に任せました。


ガチャガチャと、そこを使えるように整備している音が続きました。

多くの家が水回りを集める形の間取りかと思いますが、実家もそんな形でした。

そのため、洗濯場のとなりにトイレがあります。


私はトイレに行こうと、トイレのドアを開けました。

そして、何?、と見たものを受け止めきれませんでした。


トイレに、男性だと思われる影が座っていました。


その影は、私がトイレに入ってきたことに驚いたのか、見えていることに驚いたのか、びくり、と体を震わせたあと、軽く頭を下げました。

まあ、丁寧な……と感心しましたが、してる場合ではなかったので、

「母さん、トイレに誰か入ってる!」

と大声を上げました。

すると、トイレの換気窓の向こうから、

「ああ、じゃあ、出ていってもらって!もうすぐここが片付くから。」

と、母の声がしました。

母の声が聞こえたからなのか、男性はもう一度ぺこりと頭を下げ、ふやんと影が流れて消えました。

さすがにすぐそのトイレに座りたくはなく、私は2階のトイレにいきました。


男性はその後、姿を見せていません。

母が言うには

「幽霊は雨風が嫌いだから、木陰とか軒下とかにいるのよね。

たぶん、うちの軒下で過ごしてたんだけど、ガチャガチャやってて居づらくなったんでしょ。」

とのことでした。


たまに実家で洗濯物を干す時に周りを見ますが、特に男性の姿が見えるわけではありません。

でも、多分今でも、彼は実家の軒下を雨宿りに使っているんだと思っています。

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