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生まれて初めてガチの野良猫を保護した話⑯

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譲渡まであと一週間

2019年11月末に公園で保護した、しっぽ。保護期間中に、コロナによる外出自粛などがあり、予定が伸びてしまいましたが、ついにこのたび正式に、⑮でも書いた里親さんのお家に、譲渡することが決まりました。6月のおわりに、とうとう我が家を巣立っていきます。

私にとっても、生まれて初めての譲渡。決定までには、さまざまな過程がありました。

まずは、えつこさんによる面談。里親希望者さんと実際に会って話をし、お人柄や、猫に対する考え方――必要な医療を受けさせてもらえるか、どんなことがあっても終生責任をもってお世話する覚悟があるか、などなど――を確認。

その後、ご自宅訪問。どういう環境で飼育するのか実際に見せてもらい、ご家族の同意は得られているのかという確認や、環境に関するご提案・お願いも込みで、話し合い。アンケートも記入していただきます。

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そのあとは、ついにしっぽと対面。里親希望者さんに我が家に来ていただきました。しっぽは、初対面ということもあり緊張していましたが、かわいいもふもふっぷりはしっかりご披露できました。他にも、今暮らしている環境を見ていただいたり、私たちもはじめましてだったので、ご挨拶をしたり。

さまざまな過程の中で、里親さんは、猫に対してとても真摯に接して下さる方だということが伝わってきました。えつこさんも、私たちも、この方ならぜひ、という気持ちで一致し、しっぽをお願いすることにしたのです。

猫の幸せの難しさ

これを読んでいる人の中には、「野良だった猫を引き取ってくれる人が現れたのに、どうしてそんなにうるさく条件を付けるんだろう」と思う人がいるかもしれません。

私も以前、友人に「譲渡会で猫をもらおうとしたら、ものすごくうるさく条件を言われて腹が立った。結局交渉は決裂した」という話を聞いたことがあります。ペットショップでなら、お金を出せば猫は手に入るのですから「なぜ希望したのに叶わないの」と思ってしまう気持ちは、理解できます。

でも、しっぽを保護し、それがご縁で、間接的ではありますがえつこさんたち猫ボランティアの方々の活動や苦悩を知る中で、むしろなんのチェックもなく生き物を販売してしまうショップの方がおかしいのでは、望めば手に入って当たり前という考え方を変えなければいけないのでは、と思うようになりました。

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猫がほしいと希望する人の中には、いろんな人がいます。

飼えなくなったからと、突然飼い猫を家の外に閉め出し、面倒を見ない人。しっぽはそのせいで3年も、辛い野良猫生活を送ることになりました。

野良猫を捕まえ、自分の家に連れ帰り、勝手に飼いはじめたあげく不注意で逃がしてしまう人。猫には餌場があるのに、見知らぬ場所に連れていかれ逃げ出しても、食事にありつくことはできません。他の猫にいじめられてしまうこともあります。とても臆病な性格だったというその猫は未だに見つかっておらず、探そうとしない飼い主の代わりにえつこさんが、連日何時間も捜索することになりました。

他にも、猫を家の中に閉じ込めたまま引っ越しをしていった人もいました。どうしてそんなむごいことができるんでしょう、その結果どうなるか、きっと小さな子供だってわかるのに――。文字にしようとすると、悔しくて悲しくて、今も心の中が真っ黒になります。

たった7ヶ月のあいだにも、耳を疑うようなことがたくさんありました。私が聞きたがらないので、えつこさんはごく一部を教えてくれただけでしたが、それでも私にとっては、受け止めきれないことばかりでした。そしてそのたびに、里親希望者さんにあんなにも入念に確認をするのは、こういう現実があるからなんだなと痛感したのでした。

猫と暮らすのは、簡単なことではありません。お金も時間もかかるし、適した環境というものがあります。覚悟も必要です。個体差もあります。残念ながら今はお店で簡単に手に入ってしまう命ですが、決して安易に考えるべきではないと、私は思います。

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あと一週間

譲渡まであと一週間という日曜日、しっぽは、ずっとお世話になっている動物病院で、譲渡前診察というのをしてもらいました。その場には里親さん御一家も来て下さり、獣医さんにご紹介もできました。今後、しっぽになにかあったときは、引き続きこの病院に連れてきて下さるとのこと。先生は、保護猫や野良猫にとても慣れた方なので、ホッと一安心です。

えつこさん、里親さん、夫、私でLINEグループを作り、しっぽを譲渡する上で必要な情報は、毎日そこでやりとりしています。買っておいた方がいいもの、こちらからお渡しするもの、本日のしっぽの様子、などなど。新しいしっぽのお家は、かくして着々と準備が整いつつあります。

しっぽは、私の枕がお気に入り。ここ最近は毎日そこで毛づくろいしたり、昼寝をしたりしています。里親さんのお家で少しでもリラックスして過ごせるよう、私の枕は、花嫁道具として持たせることに。

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ああ、いろんなことがあったなあ。ついにあと一週間なんだなあ。いい里親さんが決まって本当によかった、でもやっぱり、すごくすごく寂しいなあ。

一瞬いっしゅんを噛みしめながら、とはいえしっぽを不安にさせないよう表面上はいつもと同じ態度で、今私は、限りある時間を過ごしています。

しっぽ。今度こそ幸せになるんだよ。

最終回へつづく

我が家の猫たちとのエピソードはこちらに。

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