日記⑤(2019.07.16)
昼過ぎの目覚めに、ぼくはうんざりする。もっと遅くたってよかったのに、と。
精いっぱい光を取り込んだ部屋で、ひとつ大きな欠伸をした。
今日はやろうと思っていたことがある。それは手紙を書くことだった。
二通のうちひとつはもうすでに――眠れなかった明け方をつかって――書き上げていた。だからあともうひとつだった。
こっちは初めて出す相手だった。親交はずっと前からあったけれど、会ったのは数ヶ月ぶりな上にまともな会話をできなかったのだ。
彼女のことを想像して浮かび上がるイメージは、灰色の廊下と水辺と、暗闇だった。大抵は真っ黒の服を身につけていた。
三回か四回書き直しをして、ようやく封筒に入れた。
手紙を書くと淋しくなるのはどうしてだろう。相手との分離が目に見えてしまうからだろうか。あるいは、手紙によって距離を感じるからだろうか。
のり付けをして切手を買いに行った。82円分を二枚。貼って、投函した。
ぼくの遅く、ゆるやかな一日が始まり、そしてたったいま終わった。
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今まで一度も頂いたことがありません。それほどのものではないということでしょう。それだけに、パイオニアというのは偉大です。