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暗転と酩酊

 第一の失敗は、店を沖縄料理屋にしたことだった。
 せっかくここに来たんだし、とオリオンビールから始まり、三杯目からは泡盛になっていた。ビールはザルだが焼酎にはとことん弱いのを知っていながら、場の空気に抗うことができなかった。誘われた飲み会をほとんど断らないでいたのは泥酔しないからだったのに。
 断続的な外灯は無限ループを想起させる。知らない、自分とは無関係な住宅が立ち並ぶ。だから変化に気づかない。ひたすら真っ直ぐ、同じ道を進む。
 今晩集まった五人のうち牧田と高山だけが独身だった。身近に自由を見ると、自分が拘束されているかのように思える。どうして結婚したんだっけ?
 頭がガンガンと内側から打ち付けられる。重い、を意識すると全身に回る。ゾンビみたいなのが一番楽だ。何も考えられないのが一番楽だよ。水買えばよかったなあ。
 もう三十六だよ。じゃあもう四十だよ。このまんま、何も変わんないんだろうな。何も変わんないっていうのは、喜ぶべきなのだろうか。生きてるだけで幸せって言うよな。
 いいなあ独身。いやまあ幸せといえば幸せなんだけど、なんで結婚したんだっけ。あーキツい。吐けたら楽なのに。でも美香は可愛い。どうせ十、いや二十年もしたら誰かの嫁になっちゃうんだろうけどさ。
 おっと、あっぶね。電柱にぶつかりそうになっちゃったよ。iPod充電しなきゃなあ。あ、落としちゃった、スト缶。てか何でスト缶なんてもってたんだ? まあいいや、ほっとけ。
 重いなあ。でも座りこんだらお終いだよ。歩けなくなっちゃう。ちょっとずつ、歩かなくちゃ。すっげー腕真っ赤。真赤って歌あったよね。まあ卒業の方が好きなんだけど。首かっゆ。
 はあ、はあ、息しづらいなあ。これは比喩? さあ、どっちだろうね。キツい。もうやめたい。暑いのか寒いのかもう分かんないや。風吹いたとき、ああそうこんな感じに、ちょっと風邪引きそうな感じなんだけどさ、でもあっついのよ。
 あ、いいねきてる。いつもありがとうございます。あんまり絡めてないけど、会ってみたいなあ。不倫になっちゃう? どうだろうね。
 恋人ほしいなあ。いや嫁も好きっちゃ好きなんだけど、もう何か違うんだよね。もう家族になっちゃったし。香奈。一番好きだったなあ。何で別れちゃったんだっけ。浮気されたんだっけ。あれくらい人を好きになれたことは他になかったなあ。笑えるよなあ、もう八年くらい前になるのか、タバコタバコ。
 あーもうすっげえ酔っ払ってる。こんななったのいつぶりだ? もう覚えてないなあ。
 あ、月だ。欠けてるけどキレイだなあ。気持ち悪。ごめん、もう無理。おやすみ。

飲酒執筆なんて二度とやりません。

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鱒子 哉
今まで一度も頂いたことがありません。それほどのものではないということでしょう。それだけに、パイオニアというのは偉大です。