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日記②(2019.01.16)

 お寿司をたべたい。


 それは前日の深夜二時頃に起きた、突発的な欲求だった。深夜の空腹状態では突飛な欲求が起こりがちだ。カップ焼きそば、ラーメン、カレーなんてのはよくある。そういった欲望に対して歯止めとなるのは、手持ち(お金)の不足くらいだ。
 そもそもぼくは自分の内から生じる欲望にとことん弱い。財布に千円札が二枚挟まっていればほぼ確実にその欲に従ってしまう。こと食欲に関しては猛烈に。
 話がズレてしまった。つまり、今回の深夜の欲求が向かう先は、お寿司となったのだ。しかしお寿司を叶えるのはそう容易いことじゃない。コンビニにはあったとしてももう売り切れているだろうし、出前館といっても実家だし高そうだし……。あれこれと考えたものの、お寿司は現実的じゃないし、そうこうしているうちになんだか眠気もやって来た。ひとまず今晩は寝ることにした。


 翌朝。うーん、お寿司食べたいな。昨晩の欲求を引きずるなんて珍しいので驚いた。驚きつつも、もうお寿司を食べたくてしかたがなくなっていた。しばらくベッドのなかでグズグズしたのち、顔を洗って着替えて、家を出た。
 とりあえず、家から五分のコンビニに向かった。しかしダメ元だっただけになかった。そこで次はスーパーに向かうことにした。寒い。ついでに今日のポケモンゴーのタスクもやってしまおう。グレイトスローを三回か、カンタンだな。スーパーではお弁当コーナーの一画でお寿司も並んでいた、気がする。しかし、それは思い違いだった。並んでいたのは、手巻き寿司だったのだ。そうか、もうじき恵方巻きシーズンなのか。けれど、夜を越えた欲望は妥協をゆるさない。かくなる上は、あそこしかない。
 覚悟を決めてスーパーを出て、歩き出した。入ったことが無いわけじゃない。ただ、一人では、まだなかった。着いた先は、駅前の回転寿司。推進力となったのは、カウンター席があったことだ。ずんずんと階段をのぼる。その勢いを保ったまま、二重のドアを開き、案内を待った……。


 一人でご飯を食べたことはもちろんある。しかし、それはどれも一人客が当たり前なところだった。ラーメン屋、牛丼(松の)、カレー(ゴリラの)等々。しかし回転寿司はそれらの類から外れる。一人〇〇というのは、きっかけ一つだと思う。一回の経験で、それが開かれるのだ。つまり、この体験は、ただ一人で回転寿司に行った、に留まらないということだ。この先またお寿司が食べたくなったら今度は覚悟なんか要らなくなるし、さらなる一人〇〇への抵抗やハードルも軽くなったのだ。これは成長なのか麻痺なのか。
 すこし寂しくなりながら、少食ながら九皿も食べてふくれたお腹をさすりながら、とぼとぼとポケモンゴーを片手に帰途についた。

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鱒子 哉
今まで一度も頂いたことがありません。それほどのものではないということでしょう。それだけに、パイオニアというのは偉大です。