クリプトコリネ・ウェンティ・トロピカ
クリプトコリネ・ウェンティ・トロピカは、スリランカ原産のクリプトコリネ属の中で特に有名な改良品種の一つで、トロピカ社（Tropica Aquaristic）によって選抜・育種されたものです。この品種は、独特の波打つ葉形状と濃い緑、茶、銅色などの色合いが特徴で、水槽に自然で落ち着いた印象を加えます。丈夫で環境適応力が高いため、初心者にも扱いやすい水草として広く知られています。
特徴
学名: Cryptocoryne wendtii 'Tropica'
葉の形状: 波打つ表面を持つ楕円形または槍形の葉。葉色は濃い緑、茶、銅色のバリエーションがあり、光量や環境によって変化します。葉の長さは10～25cm程度。
成長速度: 緩やかだが安定して成長。ランナーを伸ばしながら群生する性質を持つ。
サイズ: 高さ10～30cm程度、広がりは30cm以上になることもあります。
育成方法
基本条件
光量: 弱光～中光で育成可能。強光では葉色が鮮やかになりやすいが、藻類の発生に注意が必要です。
CO2添加: 必須ではありませんが、添加することで成長が促進され、葉の色が鮮明になります。
水質:
pH: 6.0～7.5（弱酸性～中性）
硬度: 軟水～中硬水
温度: 22～28℃が理想的。
底床
栄養豊富な底床を好むため、ソイルや肥料を含む底床が最適です。根が深く張る性質があるため、適度な厚みのある底床を用意することが推奨されます。
管理とトリミング
成長が緩やかなため、頻繁なトリミングは必要ありません。古くなった葉や傷んだ葉を適宜取り除くことで、新芽の成長を促進します。また、「クリプト病」と呼ばれる葉が溶ける現象が発生することがありますが、これは病気ではなく、環境の急激な変化によって引き起こされる管理起因の代謝現象です。環境が安定すると新芽が再生するため、慌てず適切な水質管理を行いましょう。
採集地
原種のクリプトコリネ・ウェンティはスリランカ南部の河川や湿地帯に自生し、主に緩やかな水流の中で見られます。この地域では、水中および湿潤な陸上環境で生育します。本品種「トロピカ」は、トロピカ社の養殖施設で選抜・育種された人工改良品種です。
主な養殖地
トロピカ社の本拠地であるデンマークの養殖場を中心に、東南アジア（特にインドネシア、マレーシア）の養殖施設でも大量生産されています。これにより、世界中で安定した供給が可能となっています。
出現の経緯
クリプトコリネ・ウェンティの中から特に色合いや形状が優れた個体を選抜し、トロピカ社で固定化された品種です。その鮮やかな葉色と波打つ葉形が観賞価値を高め、クリプトコリネ属の中でも特に人気の高い品種となっています。
レイアウトでの活用
中景～前景に配置し、自然な茂みを形成。
グループで植えることで密生した景観を作り出し、小型～大型水槽に適応。
暗めの水槽環境や弱光下でも育成可能なため、シェードプランツとして活用できます。
他のクリプトコリネやアヌビアスなどと組み合わせることで、変化に富んだレイアウトが可能。
魅力と注意点
魅力:
波打つ葉と独特の色合いが水槽に自然な雰囲気を加える。
非常に丈夫で幅広い環境に適応可能。
成長が遅くレイアウトの維持が簡単。
注意点:
環境が急変すると「クリプト病」が起こる可能性がある。これは管理起因の代謝現象であり、水質が安定すると回復する。
底床の栄養が不足すると成長が遅れる。
葉が密生しすぎる場合は適宜間引きが必要。
クリプトコリネ・ウェンティ・トロピカは、その波打つ葉形と豊かな色合いが特徴の改良品種で、中景草として特に高い評価を受けています。初心者にも育成が簡単で、自然なレイアウトを作る際に欠かせない存在です。適切な環境を整えることで、その美しい姿を長期間楽しむことができます。
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