見出し画像

マイナンバー制度を怖がる必要はない(素人考え)

マイナンバーと聞くと皆さんどのようなイメージをお持ちでしょうか? 私も以前は「マイナンバー? 税金をがっぽりとられる! 政府による監視が容易になる! 暮らしの全てが権力に筒抜けになる!」とヒステリックに反対していたものでした。しかし今は問題点があることは認識しつつも、怖がるより積極活用したほうが自分たちの利益になると考えを改めました。

まずは税金関連のことから。そもそもマイナンバー制度はアングラマネーを大量に抱え込んでいるような金持ちならともかく、中所得層以下の人間にとってはむしろ自分たちの取り分が増える可能性すらあるんじゃないでしょうか。どういうことかと言うと、税務当局が国民資産をきっちり把握して、脱税・不正まがいのことをやっている資産家などを許さず、法に則ってきっちり徴税できれば今まで取りこぼしていた分のカネが国庫に入るのですから、そこから何らかの形で一般国民に還元される可能性が出てくるわけです。そもそも中流以下の一般国民の大半は税金や社会保険料を払うことによる負担より、国庫から社会保障などの形で還元される受益のほうが多かったはずです(たしか損益分岐点は年収850万円ほどだった気がします。うろ覚えですが)。それに国民の大半は企業づとめの賃労働者なので、税務署にもとからかなり正確な所得を知られているのでごまかしようもないでしょう。トーゴーサンピン(税務署が把握している所得の割合のこと。サラリーマン10割、自営業5割、農家3割、政治家1割)とかクロヨン(同、サラリーマン9割、自営業6割、農家4割)とか言いますし。過剰反応しても無意味なんじゃないかと。

また金持ちでも貧乏人でも、脱税みたいな不正を働いていない人間にとっては、税務上の手続きが大幅に緩和するメリットは大きと思うんですよ。実際マイナンバー制度に似たような制度がすでに浸透している欧州先進各国では、個人識別番号と銀行口座が紐付けられていて、そこから所得に基づいた税金が引き落とされ一瞬で納税が終わるとか。特にエストニアなんかは進んでるらしいです。確定申告を知っている方はわかると思いますが、あれはかなり面倒くさいです。最近はパパっと済ませてくれるWEBサービスも登場しているようですが、個人的にはそれでもまだ分かりづらい。前から「別に不正なんて働くつもり無いので、政府が勝手にこっちの所得を把握して、銀行口座から税金引き落としてくれればいいのに」と思っていたのですが、外国ではすでに実現していたんですね。ぜひ日本でも導入してほしいです。

あと、もしマイナンバー制度によって国民ひとりひとりの資産が政府によって正確に把握されるようになったら、罰金刑なども絶対額じゃなくて総資産に対する割合に課せられるよう刑法が改正されるんじゃないか、という妄想もしております。罰金50万円は一般庶民には大ダメージですが、大金持ちにとっては痛くも痒くもない。しかし所有財産に対する割合で罰金を計算するようにすれば、貧乏人にも金持ちにもそれなりにと言った具合に、ちゃんと刑罰を刑罰として機能させることができるんじゃないのかなぁと。ただそうなると憲法とか平等とかの問題点が批判されると思うので、そうかんたんにはいかないでしょうが。

マイナンバー制度はいざというとき政府からの支援を受け取るときにも役立ちます。日本でも去年、コロナウイルスによって生じた経済的被害への救済のために、全ての国民に対して一律10万円を支給されたことがありました。このとき給付金を受け取ろうと役所の窓口が混雑したのは記憶に新しいところです。もしマイナンバー制度が広く普及していればこういう騒ぎになることはなかったかもしれません。それにコロナの給付金だけでなく、様々ないわゆる「プッシュ型支援(助けを必要とする人が助けの声を上げる前に行政などから積極的に福祉が提供されること)」を受ける際にも大きな力になってくれるはずです。マイナンバー制度は、明らかに中層以下の弱者にとってはメリットのほうが大きいように感じます。

と、ここまでマイナンバー制度を擁護してきましたけれども、もちろん問題もあります。大きく分けて2つ。1つ目は政府機関の個人情報悪用や監視社会化に対する懸念ですが、これは杞憂だと思います。というのも、我々国民はずっと前から様々な個人情報を役所や企業などに提供してきているわけです。正直今更「個人情報の悪用がー」「監視社会がー」と言われても「今になって何言ってるの?」という思いが強いんですよ。もちろん政府がいつ暴走するかもわからないので、そのあたりはしっかりとチェックしていく必要はあるでしょう。しかし個人情報の悪用や監視社会を恐れすぎてももうある意味手遅れですし、制度を拒否し続ければ利便性を大きく犠牲にすることにもなるので、その当はちゃんと考えたほうが良いです。

2つめは運用側のセキュリティーに対する認識の甘さです。こっちは割と深刻かもしれません。定期的に役所や企業がマイナンバー関連の情報を流出させていたり、ひどいときには中国に流れていたりなんていう怖いニュースも聞きます。ただこれは今に始まったことではありません。もともと日本社会がITに弱いだけで、マイナンバー自体に罪があるわけじゃないので、ちゃんとしてくれることを祈りつつ推移を見守りたいと思います。もしかしたら永遠にお漏らしグセがなおらない可能性もありますが……

今の所政府はマイナンバー普及に際して国民の批判を恐れすぎているように見えます。広報宣伝をもっと積極的にして、メリットを強調すれば、制度に対する国民の理解も深まって自然と広まると思うんですけど、私の目にはコロナウイルス騒動以降多少プッシュするようになったとはいえ、今ひとつ力を入れているようには見えません。予算がないんでしょうか。もしそれでも普及しないようなら、免許証や保険証、障害手帳、所有銀行口座のうち最低一つの紐付けを義務付けるなどちょっと強引な方法を取ればあっという間に普及するでしょう。最初は反発が出るでしょうが、上で述べてきた通りメリットもあるので文句もそのうち収まるんじゃないでしょうか。

私は国民は管理社会を嫌悪しているどころか、むしろ逆で、一部の独立独歩の精神が強い人を除き、内心「優しい管理社会」を望んでいると思っています。上で書いてきたように面倒臭い手続きなんてできれば誰もやりたくないですし、日本人はもともとお上に従順なところがあるので。もし悪用されるような危険性がなければ、別にマイナンバーokと思ってる国民だって少なからずいるはずです。私の周り調べによりますと、国民がマイナンバーに警戒感を抱いている理由は確たる信念があるからと言うよりも「なんとなく気持ち悪い」「テレビや雑誌が危険性を煽っているから」という理由が多いので、便利さと安全性が保証されるようになれば、制度が提供してくれる「優しい管理社会」に積極的に協力してくれる可能性すらあると思っています。

2021年5月現在、政権肝いりのデジタル庁が発足に向けて準備をしていますが、世の中が本格的デジタル・IT色染まっていく中で、マイナンバーは必要不可欠なものになっていくでしょう。そうなれば国民がどんなに拒否感を強く持ち続けたとしても、政治家としてはそれを容認するわけにはいかなくなると思います。ただでさえ日本はITの面で他国の後塵を拝しているのに、その差がより一層開きかねないからです。これ以上ITで遅れを取るようなら、国民が不便を強いられるという以上に、日本の経済力や国際的な地位などにも大きな悪影響を及ぼしかねません。なので政府もある程度までは国民の自発的な意思によって広まるのを待っているかもしれませんが「もうこれ以上は無理」という段階になったら、上で述べたような強制的な普及策を講じてくる可能性もあります。

とまあおそらくではありますが、マイナンバーが世の中に広まっていくのは時間の問題だと思うので、デメリットばかりに焦点を当て反発するよりも、メリットを見出して積極的に活用し、問題がありそうなところは民主的なルールに則って監視していく、というのが一番建設的なんじゃないでしょうか。以上。







いいなと思ったら応援しよう!