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定常経済になれば管理通貨制度っていらないんじゃないか(素人考え)

朝寝床でウトウトしながら考えてたんだけど、もし京都大学の広井良典さんなどが主張するように、この世が定常経済に移行していったら、現在のような管理通貨制度を放棄しても問題ないんじゃないのかな。

知らない人のために解説すると、定常経済っていうのは早い話が「経済成長ゼロ社会」のことだ。古くはイギリスの著名な思想家であるジョン・スチュアート・ミル(1806~1873)などもいずれ社会はそうなっていくだろうと予想したと言われる。経済成長が全く起こらなくなることなんてあるか、と批判する向きもあると思うけど、ごく身近なところに実例がある。そう、我らが日本の国だ。知っての通り、日本はここ数十年経済的な成長がほとんどない状態が続いてきた事実上の定常経済社会だと言える(と経済素人の自分は思う)。

さて。話がそれたが本文に入ろう。通貨は経済の規模に合わせて柔軟に量を調整する必要がある。経済規模よりも多すぎるカネはインフレを招くし、逆に少なすぎるカネはデフレを招く。そして経済というのは生き物なので、常に一定の状態を維持しているわけではない。絶えず動くので「ここが適正」という値が存在しない。

従来の人間社会では金や銀などの貴金属をお金として使う社会が多かった。金や銀は適度に希少性があるが、発展度の低い社会で貨幣として使うには十分な量があり、物質として安定しているので変質しにくい。近世より前の変化が緩やかだった時代にはもってこいの通貨だったわけだ。しかし時代が進んでいくうちに、そうも言っていられなくなる。

拡大する経済に十分なお金を供給する上で、流通量をすぐには増やせず、重く運びずらい金属は貨幣として扱う上で不都合な存在になっていった。そこで出てきたのが、準備高として積まれている貴金属の量との同じだけの証券を発行し、それを金銀の代わりとして流通させる兌換紙幣だった。

だがやがて、金銀の準備高以上の紙幣が乱発されるようになり、「この紙幣は金や銀によって価値が裏打ちされています」という主張も怪しくなっていく。そして1971年に当時のアメリカ大統領であったニクソンによって、それまで行われていたドルと金の兌換を停止する宣言(ニクソンショック)があり、現在の不換紙幣と管理通貨制に完全に移行した。

管理通貨制とは政府・中銀がお金を発行・管理する制度だ。通貨の流通量は経済の規模に合わせて柔軟に調整しなくてはならないが、この管理通貨制度はその国の政府と中央銀行が自国内の通貨の発行をコントロールする仕組みなので、適切に用いることさえできれば、通貨の流通が足りないことも、逆に多すぎるということにもならない「はず」だ。

管理通貨制におけるお金は紙や最近ならデータなので、金貨銀貨よりも作るのが簡単だ。だから拡大する経済の「血液」としてふさわしいとみなされ支配的になった。でもこれから本当に定常経済へ向かうとしたら、使われる通貨の量は今までみたいにどんどん増えていくわけではない。むしろ一部の社会では減っていく可能性すらあるので、通貨を常に大量供給する仕組みはいらなくなる。

それに通貨発行(の独占)という権力は国家にとっては魅力的な力でもあり、歴史上そういう権力は必ずと行っていいほど乱用されてきた。誰の言葉だったかは忘れたが「やろうと思えば出来てしまうことは必ず行われる」という趣旨の戒めがあったように記憶している。通貨の発行にも同じことが起こった。不換紙幣は政府・中銀が増やそうと思えば事実上無尽蔵に増やすことが出来てしまう。実際今も、世界各国が「コロナ対策」の名目で経済の落ち込み以上のカネをバンバン発行しまくり、すでに国内外をとわず随所にインフレの兆候がでている。特に木材や銅などの値上がりは激しく、アメリカなどでは家が欲しくても買えない人が続出したり、銅を大量に使う空調などの値上がりが始まったりしているそうだ。

このように管理通貨制には政府・中銀の思惑や見当違い、権力の乱用などにより、経済混乱を来す恐れがあるという欠点が存在する。そしてその混乱はしばしば国民生活に深刻な傷跡を残してきた(詳しく知りたい方は世界各国のハイパーインフレなどの事例を調べてみることをおすすめする)。

経済素人の自分の目には、日本はすでに定常経済に入ろうかという段階で通貨を潤沢に供給する必要性が薄れているように感じる上、しばしば暴走してインフレを引き起す「劇薬」である管理通貨制は歴史的役割を終えつつあるように思える。

しかしそうなるとこんな声が聞こえてきそう。

「管理通貨制度をやめるなら、どういう制度を導入するんだ?」

この問いに答えるのはなかなか難しい。何度も言うようだけど自分は経済や金融などに明るいわけではない。なので「こうだ」という明確な解答をすることは出来ないのだけど、一つのアイディアとしては兌換紙幣の復活があげられる。

今の管理通貨制は柔軟性はあるが深刻なインフレを生む可能性があるのに対して、金銀本位制は安定性はあるが通貨量を容易く増やせないので深刻なデフレを生む可能性がある、という真逆の性質がある。兌換紙幣制は両者の欠点を相殺する中間の制度たりうる。

中央銀行を含む世界中の銀行には必ず準備金として金や銀、プラチナなどの貴金属を積むことを義務付け、基本的には準備金の範囲内でしか紙幣の印刷や信用創造を行えない厳格な国際的規制をかける。ただそうなると「柔軟な通貨発行ができない」という金銀本位制の弱点をそっくり抱え込むことになるので、かつての兌換制度をそのままよみがえらせるのではなく「準備された貴金属の○倍までの額面なら通貨の発行を許す。ただしその範囲を逸脱することは絶対禁止とする」のような管理通貨制度の良い部分を一部取り込むことで、柔軟性と安定性のバランスを取るのが良いんじゃないだろうか、という素人考えでした。

ただパッと思いつく欠点として、金・銀・プラチナなどはこれから様々な分野でも需要拡大が見込まれているので、銀行の準備高としてそれら取られてしまったら、産業用や宝飾品用に回る分がなくなってしまうのではないか、みたいな部分もあるから完璧とは言えないけど。

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