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貴金属(銀)を保つなら現物メインにしたほうがいいよ、という話。

 このnoteでは、反緊縮カルトのような自分が最底辺の痴れ者であることに気づかない痴れ者を批判する以外にも、いざ日本で経済的な惨事が起きてしまった場合の対策などについても書いている。たとえばこちらの記事がそうだ。

 上の記事を読んでもらえばわかるが、私は貴金属の現物、特に銀を保険として手元においておくことを推奨している。だがこう思われる方もいるだろう。

銀の現物は重いし、保管に手間がかかる。それに火事や泥棒への警戒もしなければならない。それに銀焼け(空気中の硫黄と銀が反応して黒ずみ錆びたような状態になってしまうこと)への対処も必要で面倒だ。貸金庫に預けても、行員に盗まれるかもしれないしなぁ(三菱U◯J)。

 まあ確かにその指摘は正しい。特に私がおすすめしている銀は金などよりも重さあたりの価値が低いので、ある程度の量を買う必要があり、手に持つと結構重い。女や老人など筋力のない人ならなおさらそう感じるだろう。

 そこであなたははっとひらめく。「そうだ! 新NISAを使って貴金属のETFを買えばいいじゃないか!」。なるほど、名案である。ETFなら火事でなくなることも泥棒に盗まれることもないし、重さ自体がないのだから移動の手間がない。その上NISAの枠で買ったETFや株は売却益に税金がかからないといううれしいおまけまである(現物は売却すると譲渡所得として課税対象になる)。実際わたしもすこしだけ銀のETFを保有している。パソコンやスマホをいじるだけで持っている銀の量が変えられるので、ポジションの調整に便利だからだ。

 だがしかし、万能に見える銀(貴金属)ETFにも弱点が存在している。主だったものは次の通り。

1,発行体リスクが存在する
ETFは運用会社や証券会社を通じて保有する金融商品のため、管理主体の破綻や、裏付け資産に関する不正・管理ミスなど金融商品の信用リスクが存在する。大手運用会社のETFでも経営破綻リスクは極めて低いとはいえ、現物に比べると直接手元にモノがない以上上のようなリスクは常にある。

2,システミックリスクの存在
システミックリスクとは、金融システムや経済全体に広がるリスクのことを指す。一部の金融機関や市場、経済の特定の部分で発生した問題が、連鎖的に他の金融機関や産業、さらには国全体や国際的な経済に広がり、システム全体の崩壊や大規模な危機を引き起こす可能性があるリスクのことを言う。システミックリスクは、単独の企業や市場の問題に留まらず、広範囲に影響を及ぼす「連鎖的なリスク」である点が特徴。つまり金融システムが崩壊するような惨状になってしまった場合、ETFの運営会社や自分の使っている証券会社がアオリをうけ倒産し自分が預けていた債権やお金もパーになる可能性があるということ。

3,サードパーティリスクの存在
サードパーティリスクとは、企業や組織が外部の第三者(サードパーティ)と関わることで生じる潜在的なリスクを指す。第三者は、取引先、委託業者、下請け企業、サプライヤー、外部のサービスプロバイダー、パートナー企業などをさす。つまり、証券会社やETF運営会社が直接管理できない外部の関係先が原因で発生する問題のこと。

4,現物に交換してもらえないことがある
これは買ったETFの種類によるが、一部の貴金属ETFは投資家がETFを売却して銀や金のインゴットと交換できる仕組みを提供しているものがある。しかし最低交換単位が大きいなど、一般人には高いハードルが儲けられてることもある。したがって、小口でしか売買ができない零細投資家は純粋に価格連動を狙う金融商品として割り切る必要がある。ちなみに日本で有名な純銀上場信託 (1542)は現物との交換が不可能な「紙の銀」である。

5、信託報酬・管理費用がかかる
現物は一度購入すればその後は保管コスト(火事や泥棒など)のみに気をつければいい。一方、ETFは売買手数料・信託報酬・経費がかかるため、長期保有するとコストに気を配る必要がある。

6,決まりによる強制的な注文の執行停止
これはどういうことかと言うと、純銀(純金の方も同じ)ETFの信託約款には次のような一説が存在する。

その他申込み等に関する事項 受託者は、以下に該当する場合には、本受益権の申込みの受付を停止すること又はすでに受け付 けた申込みの受付を取り消すことができます。その場合、委託者、受託者又はカストディアンのい ずれも、当該受付の停止又は取消しにより投資者に生じた損害について責任を負いません。

(中略)

(d) 天災地変又は政治、経済、軍事、通貨等に係る非常事態が発生した場合、その他委託者、受託 者又はカストディアンの支配を超えた事由により、銀地金の適正な条件での調達又は取得が困 難な場合又は遅延する場合

 つまり、例えば台湾有事などの戦争が起こり世界的な金融不安に発展、危機を感じた人々が安全資産とされる貴金属のETFを買って値段が一気に暴騰しても、取引がなかったことにされるリスクが有るということである。これはただの脅しではない。実際2022年3月にニッケルの値段が一日でいきなり250%も高くなった事があった(ロシア・ウクライナ戦争の結果だとかいろいろなことが言われているが、経緯はどうでもいい)が、ロンドン金属取引所(LME)はこの取引を「市場の秩序が失われた」とかいう説得力がありそうでまったくない自分らの論理と権限でなかったことにしてしまったのである。当然、このせいで市場が止まらなかったら莫大な利益を得ていたであろう投資家らは利益確定出来ず、絶好の儲けの機会を失った。逃げた魚は大きいという。この件はその後裁判に発展している。

7,緊急事態に政府などによって没収されるリスクが有る
これは過去のエントリーでも似たようなことを書いた(記憶がある)のであまり詳しくは書かないが、もし日本が財政的に行き詰まっていよいよ財産税などの究極の政策に手を出さざるを得ないような状況に陥った時、証券会社においてあるETFはどうなるだろう? たちどころに政府に補足され、課税対象にサれてしまうに違いない。それに対して現物は誰がいつどれだけの量の貴金属を買ったのかは買った店を調査すればわかるかもしれないが、財産税をかけようとしている今この瞬間、誰がどういった種類の貴金属を、どれだけ持っているかは正確な把握が難しい。なので、政府からの財産強奪を避けるためにもETFの所持は控えめにして置くことが無難だろう。

……とまあこのように実態を持たない「紙の銀(金)」にはこういうリスクも有るということだ。もちろんPCやスマホがあれば売り買いできる簡単さや、NISAの免税措置など魅力が多いのも事実だが、全ての貴金属をETFという形で持っておくのはおすすめしない。いざというときの保険の意味を込めて、自宅に現物もそれなりに持っておくことを強く推奨する次第である。

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