じいちゃんが死んだ日【先輩の一言で心が軽くなった】
「大丈夫?」
これは10年前の話
社会人3年目の春
私の誕生日の朝
「誕生日おめでとう!」
「今年もいい年にしろよ!」
「今度飯おごるよ!」
「メールを見たらすぐに電話してください母より」
ん?オカンのメールだけなんか勢いが違う。
とりあえず友達のメールを置き
朝一番で母親に電話をかけた。
私「おはよう」
母「おはよう」
私「どうした?」
母「落ち着いて聞いてください」
「昨晩じいちゃんが亡くなりました」
私「…。」
はじめて身内が亡くなったこともあり
言葉が一言も出なかったこと
母の声が震えていたことを
今でも覚えている。
聞いた直後から
誕生日のことは完全に忘れていた。
とりあえず会社に
その旨を伝えて故郷に向かうことにした。
私のいる業界は私の誕生月が
ピークに忙しく、その月だけは
24時を回るのが当たり前だった。
しかし会社や同僚のことより
家族や祖母が心配でそんなことを
考えている余裕はなかった。
そして故郷に着くと
家族や親戚たちは悲しみに包まれていた。
なにか言葉をかけてあげたかったが
何を言ってあげたら良いのか
悩んでも悩んでも分からなかった。
向かっている途中も
じいちゃんとの思い出を思い返したり、
なんて声をかけるか考えていたが
何も思いつかなった。
というか
何を言っても悲しみが消えることはない。
そんな気がしていたのだ。
いま思っても何も声をかけてあげれなかった
自分がもどかしい。
気の利いた一言くらい言えないのかと
後悔しか残らなかった。
そしてあっという間に葬儀が終わった。
案外、葬儀が終わると家族や祖母にも
自然と笑顔が戻り、いつもの雰囲気になっていた。
手伝いを済ませ
また遊びにくる旨を伝えて
家に帰ることにした。
そして仕事のことを思い出す…。
ありえないくらい忙しい時に
3日も仕事を先輩たちに押し付けて
連絡すらしていなかった。
「これはマズイ…」
どんな顔をされるんだろうか…。
帰宅した次の日
朝一番で出勤し掃除を済ませて
先輩たちを待つことにした。
(ドキドキ…ドキドキ…)
ガチャッ
私「おはようございます!」
「3日も空けて…」
先輩「大変だったな。体調は大丈夫か?」
私「大丈夫です!それより3日も…」
先輩「こういう時はお互い様だ!元気ならよかったよアッハッハッ」
このときハッとした。
自分は悲しみに暮れているばあちゃんに
何も声をかけてあげることが出来なかった。
だけど先輩に声を掛けられて気付いた。
「大丈夫?」と言われるだけで
とんでもなく心が軽くなることに…。
私はとんでもない勘違いをしていた。
気の利く言葉をかけることしか
考えていなかった。
しかし気の利いた言葉など不要なのだ。
そして、そのまま外に出て
ばあちゃんに電話をかけた。
私「ばあちゃんあれから体調どう?」
ばあ「もう大丈夫!だけど色々とありがとね」
こうして
じいちゃんと私の葬式は幕を閉じた。
「大丈夫?」の一言で心が軽くなる。
あなたの周りで苦しんでいる人がいたら
ぜひとも言ってあげてほしい。
たった一言で心が軽くなる人はたくさんいるから
「大丈夫?」
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