「このモデルハウスのこの辺までなら私の土地にも入るかしら・・・」
朝一番で埼玉県川口市で進行中の古民家再生の現場へ向かった。今日は左官の小沼さんが現場に来て作業をしてくれる日だ。小沼さんは榎本新吉さんのお弟子さんだった方で、今の左官職人の中でも東の横綱というくらいの存在である。今日は和室の土壁の下塗り作業である。出来上がってしまえば分からなくなってしまうけれど、杉板を貼った木ずり下地に半田を塗って、その上に中塗り土、仕上げ土を塗り重ねていくというとても手間のかかった丁寧な工事の末に、素晴らしい土壁が仕上がっていくのである。
11時、東京都板橋区にて住宅の建て替えを検討中のSさん打ち合わせ。Sさんは以前ますいいのモデルハウスにお越しいただき、一目惚れしていただいたということである。「このモデルハウスのこの辺までなら私の土地にも入るかしら・・・」の言葉は何度か聞いたけれど、本当に一番の褒め言葉だと思う。実際には土地ごとに法律による規制も違うし、そもそも土地の形も違う。それに方位が違えば光が入る向きだって違うし、周辺に建っている建築の状況だって違うわけなので、一軒一軒丁寧に設計を行わなければ良い家などできるはずもないのだけれど、そんなことは分かっていても「このモデルハウスのこの辺までなら私の土地にも入るかしら・・・」を言われた時の嬉しさというのはなんとも言えないものなのだ。