キミゼロ 05話

ストーカー気質というのはないんだけど、かなり重めの恋愛体質の人とは付き合ったことがある。
日に10往復以上のメッセージのやりとりがあった上でメールも数往復していて、夜10時すぎからは二時間以上の長電話。このくらいはしていた。
これいうと苦笑いですごいですね~っていわれるので、つかみの話にしてたくらいだった。
で、こういう事してたことありましたよ~って言ってる内にメル友になって、一緒に映画観に行きませんか?ってなって付き合うようになった人もまた、密度と湿度の高い関係の人でした。
重めの話を「羨ましい」と感じてくれていて「こんな風に愛されたい」という願望から好きになってくれたパターン。
キミゼロのヒロインとかなり似た感じの人だった。

重めの愛情を注いでくれる人に、その愛を試しちゃう人って居るんだと思う。無理言ってこっちに来てもらうとか、嫌がることを「オレを愛してないのか」とかいって無理強いして試すようなこと。
そして全幅の信頼をしてくれてることをいいことに浮気する。
キミゼロのヒロインが何度もやられたのはこれだろう。

いかにもモテそうな女子と付き合えて優越感を持ち、信じてもらえてるから緊張感が薄くなり飽きてしまう。そして浮気もする。
とてもありがちな展開。

僕は美人で人望もある素敵な人に好かれて嬉しいし、重めなのも全然問題ないし、むしろ丁度良かった。お互い全力投球だった。全力投球のキャッチボール。
時間の都合が付けば、即デート。門限にも気を使うし、会えない日に無理に時間を作らせるようなこともしない。会えばイチャイチャしてた。
なかなか気づかなことの一つに、キスを拒否されたことがないというものがありました。
いつ何時キスしようと絶対拒否されなかった。キスしようとすると(こっちからしたかった)と言わんばかりに付いてくる。
もう移動しないと時間がない、というときでもキスしようとするとノリノリでしてくれる。
イチャイチャしてるときにしつこくキスしても絶対に嫌がらないし、ずっとしようとしていた。
ここまで徹底してる人はどうも居ないらしく、この話すると驚かれることが多かった。
かなりあとになって珍しいタイプだったと気づけた。
だいたい「しつこい」と言われたことがないし、しつこいと思われたこともない。むしろ「待ってました。もっと続けて。」という態度のほうが目立ってた。
そのくらいには重い人でした。
こういう人に「面倒くさいよ」とか「重いよ」とか言ったら悲しむはず。
そしてストーカー化しかねないとは内心思ってました。
でもそういう「試し行動」を一切する気はなかったし、
素敵な人だったので誠実に接しようと常に考えていたので、そういう邪悪化の傾向を全く知ることはありませんでした。
あとになって、交際する前の頃に無連絡で僕の住む家の最寄り駅に来て一つの連絡もせず、ただ引き返すということをしてたらしく、さすがに「え?」と思いましたね。
むちゃくちゃモテて恋愛経験も豊富な人なのに、僕みたいな風采の上がらない男を選び、執着するのは良く分からなかったけれど、いつまで経っても恋愛初期の勢いと誠実さを維持したことは彼女の眼鏡にかなったことなのだと随分あとになって知ったことでした。
裏返せばモテる男と付き合うと、釣った魚に餌をやらない傾向が強く離れていってしまうことがあまりに多すぎたのでしょう。
容姿はともかく、僕の振る舞いは彼女にとってかなり完成されたものだった。
キミゼロの主人公の手堅さはそれ自体が最大の武器。
そしてデジタルガジェットでの多方面への連絡の取りやすさは、様々な誘惑や罠があり簡便ゆえに余りに危険すぎる。
次回はそういう危険の話みたいです。

本編前半には触れられなかったので、後でまた続きを書くかもしれません。


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