見出し画像

クリスマスの真実と林檎の芯

少年時代、クリスマスの衝撃体験した話をします。(普通に読んで4分) 
サンタさんを信じている人は読まないでください。

 僕はずっとサンタさんはいると信じていましたが、小学4年生で初めて疑いました。友達から「サンタの正体は親なんだぞ」と聞かされ、一番の友人と、いるのかいないのかを議論したのを思い出します。

 そこで、本当に親がサンタなら、子どもが欲しがっても買ってもらえないような高いラジコンカーを頼んだらどうか、という話になりました。

 それは一万円以上するものでした。
 うちの親はそんな高価なものを買えないだろうから、もしサンタが親なら、当日違うおもちゃが枕元に置かれているかもしれないと、完全に疑っていました。友人と同じような文面でサンタに手紙を書いて、それを親に渡したのです。
 
 サンタは本当にいるのか、それとも親なのかを確かめる大作戦です。
 
 時代は、ラジコンカーブームでした。あちこちのおもちゃ屋で売り切れていたので、もし親がラジコンカーを買うなら、うちの親戚がやっている隣町のダイエーの中にあるおもちゃ屋で買うだろうと、あそこしかないと予測を立てました。

 隣町はちょっと遠いのでいつも土日を利用して行きます。そこで出かけなければ、買えるわけがないだろうと、またもし買い物に行ったとしてもおもちゃ屋に行くかどうかを見張ればわかるだろうと考えていました。けれども、我が家はその期間、買い物には行きませんでした。

 疑っている僕は、片っ端から家の中を調べました。どこにもクリスマスプレゼントらしいものはありませんでした。
 
 そして、クリスマスの朝がやってきました。
 
 目をさますと、なんと枕元に僕がサンタさんに頼んだラジコンカーが置いてあったのです。

 本当に驚きました。

 その時は、本当にサンタさんがいるんだと確信しました。
 おなじく友人もラジコンカーをプレゼントされていました。疑ってしまった自分が恥ずかしく、サンタさんに心から、ごめんなさいという気持ちでした。

 問題の次の年、5年生のクリスマスです。

 完全に信じている僕は、2台目のラジコンカーをクリスマスプレゼントに頼みました。イブの日、サンタさんを迎えるために、妹とともに玄関の掃除から、家の中の床や壁の拭き掃除をしました。玄関から二階の僕と妹が寝ている部屋まで、サンタさんが迷わないように「ようこそ我が家へ」「こちらです」「足元気をつけてください」と書いた紙を玄関に貼りました。そこから矢印を子ども部屋までつけました。

 枕元には靴下をぶら下げました。「きっと靴下には入らないでしょうから、大きければこちらへ置いてください」とメモを置き、プレゼントを置く場所まで設置しました。

 その日はサンタが待ち遠しくて、妹と早く寝ることにしました。
 おやすみなさいを言いにリビングに行ったら、父がキッチンで立ちながらりんごを丸かじりしていました。いつもなら皮を向いてカットして食べていたのに、珍しい光景です。「光洋も食べるか」と聞かれたので、「サンタさんが来るから早く寝るんだ」と言ったら、父が「今年はどうかな」と言ってニヤニヤしていました。僕は、変なことをいうなと思いながら眠りにつきました。

 そして、クリスマスの朝、

「わぁ〜サンタがきた!」

という妹の声で目覚めました。

 妹を見ると、リカちゃんハウスの大きい箱を抱えていました。
僕は「すごいね」と言いながら、あわてて自分の周りを見渡してみましたが、プレゼントは置かれていません。

「そんなはずは…」

 あきらめかけた時、枕元の壁にぶら下げてある靴下が、何やら大きくふくらんでいるのに気づきました。

 急いで中を取り出してみると、新聞紙の塊が出て来ました。

 新聞紙を開いてみると、それはチラシにつつまれていて、それを取ると、サランラップにぐるぐるにくるまれているものが出てきました。

 これまでもらったことのないサンタからの奇妙なプレゼントに困惑しながら、サランラップをすべてとりのぞきました。

そして、中から出てきたのは?

りんごの芯。

食べ終わったあとの茶色に変色した

りんごの芯。

サンタからのクリスマスプレゼントが、

りんごの芯。

 呼吸ができなくなるほど、びっくりして、衝撃で、それを持ってリビングに走っているなかで、昨夜の父が、りんごを食べているシーンが回想されました。

 嘘だと、何かの悪い冗談だといってほしい最後の望みをかけて、父に「靴下の中にこんなのはいってた」と見せたら、

 父が大笑いしながら僕にこう言いました。

「それがクリスマスの芯実だ。なんてね」

 それから僕はサンタを信じなくなりましたが、父も信じられなくなりました。

 今思えば小学校5年生で、サンタを完全に信じきっている僕に、真実を伝えたい不器用な父の思いやりだったのかもしれません。

 ちょうど、小学校5年生の長男が「サンタさんは、信じている人のところに来てくれる」と、今朝も言ってました。確かにそれは真実だと思いました。信じている限り、サンタは来ますものね。

 僕は、今年も彼の枕元にプレゼントを置くつもりです。

いいなと思ったら応援しよう!