15日目 前向きモードで

深夜2時、のどの奥の違和感と痰によるむせで、苦い胃酸を吐く。痰の吸引をきっかけにそうなることもある。のどはとってもデリケート。特に、のどに穴を開けている今は特に。

いつものように、栄養剤から一日が始まる。胃瘻に栄養剤のパックをつなげて、点滴のようにポタポタ落としてく。抗生剤は一旦終了。右腕の点滴針がはずれ、右手がフリーになった。ちょこっと身軽になる。

毎日、だいたい午前中のうちに「おしも洗い」「創洗浄」をしてもらう。看護師さんができること、介護スタッフさんができることは、結構厳密に決められていて、役割分担しながら看護・介護が進められている。トイレとレントゲン以外はベッドから出られない今、歯磨きも、身体拭きも、おしも洗いも、創洗浄も、すべてベッド上で行われる。数少ない、ベッドから離れる機会を狙って、介護スタッフさんがシーツや枕を新しいものに変えてくれる。だからベッドに戻った時にぴっかぴかのベッドになっているときは、晴れやかな気分になる。お風呂に入ってさっぱりしたような感じ。

日中、ベッドの背は起こして過ごすようにしている。ずっと横に倒して寝ていると、肺が弱くなってしまうらしい。怪我をしたとき、私の左の肺はぺしゃんこにつぶれてしまった上に、中に血がたまっていたそうだ。だから血を出す管を左胸の脇につけたり、肺に空気をいれて膨らませたりして処置をしてくれたとのこと。このあたりの記憶はない。呼吸ができることに改めて感謝する。

あぐらの体勢ができるようになった。これがどれだけお尻を楽にしたことか。ただし前にはかがめない。骨盤の創外固定の金具が、胸と太ももに当たるのだ。これは創外固定がとれるまではしかたがないこと。あまり気にしない。

面会に来てくれた妹夫婦は、結婚式のドレス選びをしたんだと、写真を見せてくれた。幸せそうで何よりだ。母は絵画展(私が怪我直前まで準備に励んでいた職場の行事)のクロージングパフォーマンスの写真を見せてくれた。久々の職場の仲間の輝く姿に、励まされる。夫は机の上を整理するためのグッズを用意してくれた。体温計や吸い飲み、櫛、歯ブラシ、鏡など小物が多く、看護師さんが机を拭くときに手間取らせてしまっていたので、ありがたい。物がきちんと整理されると、気持ちもしゃんとする。

空き時間はリハビリをする。音楽を聴きながら、リズムに合わせて、曲調に合わせて、足の筋トレと左手ほぐしをする。ロック、フォーク、イージーリスニング、クラシック。リハビリのためのお気に入りプレイリストをつくった。睡眠導入のためのプレイリストもつくった。BGMは力になる。鼻歌を歌いたくなるけど、大部屋だし、そもそも声が出ない。口パクでうたう真似をして一人遊び。楽しめる時は、楽しむ。

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