来るG30に備え、ゴス5人それぞれの声の魅力を改めて分析する【前編】
ゴスペラーズの30周年記念ライブ、G30が目前に迫っている。
楽しみだなぁ…(恍惚)
とりあえず、死に物狂いで武道館のチケットはゲット。
これでもう、最高の一日は約束されているのだけれど…
なんというか、せっかくだから相応の準備をしておきたいな。ライブというものは、受け手の状況で感動は何倍にも増幅する。
モチベーション、知識、コンディション。
要素としてはいくつかあるが、とりわけアーティストに関する「事前知識」は積極的に知っておきたい。知ることで、より彼らへの解像度が上がるからである。
…そしてゴスペラーズの場合、おすすめしたいのが彼らの「声の魅力」について知ること。
なぜなら彼らは5人で歌う。超絶スキルの5人が超絶ボーカルワークをやりたい放題繰り広げるので、「あれ、今誰が歌ってるの??」となるのは歴戦のゴスマニでも一度は通る道である。
「今、誰と誰がハモっているか」
「誰の声にどんな特徴があり、どんな場面で歌う傾向にあるか」
このへんが理解できると、ただでさえ素晴らしい彼らの演奏に奥行きが浮かび上がってきて、その…すっっごい良いですよ。
良き体験を、より良き体験に。
…というわけで、今回はゴスペラーズの5人を、とりわけ彼らの「声」にフォーカスして今一度復習してみようと思う。
それでは…Fight!
1.黒沢薫
さて、まずはハードコアカレーシンガー、黒沢薫さん。
ゴスペラーズの中でも最もリードをとることが多い彼。
中でも、勝負曲のここぞというときリード担当する場面が多く、彼が前に出てきたときは、「今ゴスは勝負をしかけてきている…!」ということで、そう考えるとエモさもひとしお。(?)まさに「ゴスペラーズ」の看板を背負う存在と言えよう。
それでは見ていきましょう!
①声の特徴
彼の声の特徴は、煌びやかでスリリングなハイトーン。
この「スリリング」というのがポイントで、しっかりと筋肉で支える、巧みにミックスボイスへ移行する等、それぞれの安定した高音を使い分けるメンバーが多い一方、「もう明日のことは知ったこっちゃねぇ」と言わんばかりに絶唱する姿は、なんだろう。一番ロックを感じる。
もちろん彼も超一流のボーカリスト。
しっかりと筋肉で支えながら歌唱しているのは間違いないが、眉間に皺を寄せながら誰よりも高い音を連発する彼を見ていると、それはもう彼の「生き様」というか、ボーカリストとしてのプライドをかけた勝負を叩きつけられているような気がしてシンプルにアガる。スキルとか歌唱力とかを飛び越えてガツンと胸に響くものがある。あるよね?
実際我々日本人は、こういうタイプのボーカリストが大好きだ。
ミスチルの桜井さんなんかはまさにそうだし、GLAYのTERUさん、オーイシマサヨシさん等も同系統な気がする。
こういうボーカリスト…良いよね。
最近のミュージシャンってミックスボイスでどこまでも出せるスキルフルな方が多い一方、こういうタイプは少なくなっている気がする。
どちらも良さはあるが、男性ボーカリストが絞り出すように歌う声からしか得られない栄養素がある。黒沢さんはボーカルグループの一員でありながらそんな要素を兼ね備える、類稀なるボーカリストです。
大切に見守っていきましょう。
②おすすめの楽曲
さてせっかくなので、各メンバーにつき一曲ずつ独断と偏見でチョイスしたおすすめ曲を挙げていきます。
黒ぽんはリード曲が多いので迷うが…
ここは至極のアカペラナンバー、「Platinum Kiss」を挙げます。
この動画、なんと公式より10/19にアップされたばかりである。運命か?
1番メインリード黒沢さん→2番村上リーダーと、年長コンビで歌い継ぐ本曲。持ち前の高音でスコーンと突き抜ける黒沢さんと、しっかり支えながらソウルフルに歌い上げるリーダーの対比が良い。いや、尊い。
そして特筆すべきは、2:55~のブリッジ部分。
「永遠に」といい「Promise」といい、ブリッジで黒沢さんが出てくるということは、ここが一番のキメどころである。そしてこのタイミングで彼が渾身のハイトーンを放つとき、その曲は神曲であることが約束されます。
もう今日は、これだけ覚えて帰ってください。
2.村上てつや
お次はリーダー、村上てっちゃん。
地声とファルセットを使い分け、ソウルフルなナンバーから甘〜いラブソングまで、ギャップのある歌唱を見せてくれる彼。
それでは、早速見ていきましょう!!
①声の特徴
さて、彼の声の特徴はその音域の広さと、一貫した安定感。ライブ中ベースから1stコーラスまで最も広い音域を担当する彼なのに、一切ブレやしないのは何かがおかしい。まさにボーカルの鉄人。過去に筆者が見てきた色々なメディアの中で、ゴスペラーズ中最も安定した歌唱力と評されることが多かったのは村上さんじゃないかな。
その秘密は、しっかりと筋肉で支えられた発声だと思う。
彼の肉体美がこんなところで活きているとは…
冗談はさておき、彼の安定した歌唱はデビュー当時からずば抜けており、もう早い段階で一定のメソッドを体得していたのではないかと思う。実際筆者もボーカルレッスンで、「高音の支え方は村上さんを参考にすると一番わかりやすい」と教わったことがある。
その声質はソウルフルでエモーショナル。さらに低音から始まり、ある程度張る音域に至るまでずっと強い響きが持続するという特徴がある。
個人的には、似た系統のボーカリストとしてスキマスイッチの大橋さんや、ポルノグラフィティの昭仁さんを連想する。
彼らもまた、筋肉で支えるタイプのボーカリストだ。
長時間のライブでも全くブレない安定感と、高音でもピーンと張り詰めた力強い響きが共通点だ。あと声の立ち上がりが抜群に早い点とか。
もし仮にこの3名がハモったら、めちゃくちゃ野太く男らしい字ハモが実現すると思う。誰か企画してくれ。したらたぶん笑っちゃうけど。
そしてさらに…村上てつやは、実はそれだけではない。特筆すべきこととして、彼には彼だけの必殺技が存在する。
それが、ファルセット(裏声)。
他アーティストでもバラードの一部でファルセットが入るという楽曲は多いが、彼のようにサビを通してファルセットで歌い続けるという歌唱をするボーカリストは激レアである。
その歌唱は、Earth, Wind & FireやThe Stylisticsといった往年のソウルミュージシャンを連想させる。
(ギャッツビーのやつ)
当時の日本でこれをやっていたのって、マジで村上てつやとグッチ雄三だけだったんじゃないかな。
(知る人ぞ知る超名作。)
程なくして、平井堅や森山直太朗がファルセットを多用する唱法で登場したけれど、彼らもあくまでアクセントとして入れる使い方だ。
ともかく、こうした往年のソウルグループへのリスペクトを胸に日本でこの歌唱を実践し続ける彼とグッチ雄三は、本物のソウル侍である。
…そしてこの武器が、彼自身にアッパーチューンからエモーショナルなバラードまで歌いこなす広すぎる幅を与え、さらにゴスペラーズというグループに異次元の音域を与えている。
村上リーダーの存在そのものが、ゴスペラーズというグループの可能性を押し広げていると言っても過言では無いだろう。
②おすすめの楽曲
さて続いて、村上リーダーのボーカルが堪能できるおすすめ楽曲について。よく知られたシングル曲から、意外とマイナーなアルバム曲も多く歌う彼。
そんなリーダーのおすすめ曲は…うん、まず聞いてください。
こちらの楽曲になります。
はい、「ひとり」です。
どメジャーでごめんなさい。
いや、でもそうなるって!
というのもこの曲、「綺麗なバラード」で片付けるには「ちょっと待ってくれ」と言いたくなるくらいメチャメチャ攻めた楽曲である。
だって、いきなりフルスロットルの高音域で開幕するAメロに、まさかの終始ファルセットという掟破りのサビ。
挙げ句の果てには、主旋を他の4人に任せ、ファルセットフェイクで縦横無尽に暴れまくるラスサビ…なのに、終始歌詞は極上のラブソング。
なんだそれは。やりたい放題か。
革新的すぎる一曲である。
先に語ったとおり、当時のファルセット唱法とは半ば飛び道具みたいなもので、主に「ここぞというときに感情が高まった切なさを表現する」唱法として使われていた。
たとえば、こんな曲とかね。
そんな音楽シーンで突如として現れた、サビ全部ファルセット曲。しかも「シャウト」と言って良いほどの強いファルセットで、なおかつアカペラ曲。いや攻めすぎだって。
しかし結果、異例の大ヒット。
当時のミュージシャンは皆、「やられた」と思ったと思う。
でもこれは、「往年のソウルミュージックの大ファン」というリーダーのバックボーンがあってこそ生み出せた楽曲である。この曲がそうした音楽へのリスペクトに溢れた彼らによって生み出され、さらにそれで彼ら自身も一気にブレイクして。いやぁ…本当に良かったなぁ。
…長くなったが、この曲は「強さ」「激しさ」「切なさ」「弱さ」といったボーカリスト:村上てつやの魅力がこれでもかと堪能できる曲である。
ぜひ彼の絶唱に注目して、今一度じっくり聞いてみてはいかが?
(円熟味マシマシのこちらも良き)
…さて、ここまでで2名を紹介しましたが、感情が入って思いがけず長文になってしまいました。ゴスペラーズはどうしてもこうなってしまうんだよなぁ…!
なので、前編・後編に分けることにします。
後編もいずれアップしますので、気長にお待ちください。
それでは!!
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