僕は藤井風を支持する(Stadium Live “Feelin' Good”所感)
Fujii Kaze Stadium Live “Feelin' Good” を視聴した。
時は8/24、場所は日産スタジアム。
日産スタジアムと言えば、2021年に予定されていた公演は新型コロナの影響によりあえなく中止に…と思いきや、予約だけが残された無人のスタジアム、そのど真ん中にグランドピアノを置き、無人の中たった一人で弾き語り配信を行うという、伝説のフリーライブをやってのけた場所である。
…うん、今振り返ってもどうかしてる。
もちろん良い意味でね。
こんなに粋なことをやってくれるチームは他にないよ。
さて、そうした経緯があっての念願の場所での公演。さらに直前に無料配信も発表されたことで、多くの注目を集めた本ライブ。
すごかったね!!!
いや本当に、素晴らしいライブでした。
僕は残念ながら現地参戦は叶わず、自宅でYoutube配信を視聴したのだけど、本当に感銘を受けた。…と同時に、色々なことを考えた。本記事では、それを書き留めておきたい。
…ちなみに過去に自分が書いた藤井風関連記事として、以下のようなものがあります。良かったらどうぞ。
さて、ではさっそく感想を。
何よりまず思ったのが、
「これは凄いステージだ!!!」ということ。
アホみたいな感想で申し訳ない。
ピアノ独奏あり、アレンジあり、ダンスあり。
それにドッキリや、お得意のユーモアだって盛り盛り。
音楽だけにとどまらず、総合エンタメとして極めて上質なステージ。おそらく、「現時点の藤井風の集大成」と言って差し支えない内容だと思う。
藤井風という日本一のチャーミング男を中心に各方面のスペシャリストが結集すると、あんなことになるんだなぁ…。
「特にここが素晴らしい!!」と、一曲ずつ語っても良いのだけど、そうすると一万字くらいになりそうなので、この場では自重する。
…でも個人的ベストを挙げるなら、やっぱり「満ちてゆく」かなぁ。本当に大好きだ。あの曲。
最高にアガる楽曲たちの応酬の中で、ふとエアポケットのような静寂から始まるのがたまらなく良い。原曲だとピアノ一本から始まる出だしはライブだとエレキギターになっていて、そういうちょっとしたアレンジも憎いね。Tiny desk concertでもそうだったっけ。
…あと、最後に自らの墓標を抱くように眠るのも好きだな。その真意はわからないが、これまでの人生を全肯定しているように見える。
人生における優しさとかポジティブさに溢れた、名演出だと思う。
…さて、素晴らしい要素は無限にあるので、一旦置いといて。
次に僕が思ったのが、
「これ…藤井風大変すぎない??」ってことだった。
だって歌あり、ピアノあり、ダンスあり、である。
各曲の歌詞やピアノの奏法(=楽譜)はもちろんのこと、映像とシンクロさせるための細かい振り付けや、自転車など小道具を用いたステージ上での動き、ダンサーとの絡みなど、どう見ても覚えることが多すぎる。
これがアイドルグループやバンドなら、複数メンバーがいることで観客の視線も多少は分散されるだろうが、ここでの絶対的フロントマンはもちろん藤井風。ただ一人である。逃げも隠れもできない。7万人の観客の視線は、常に彼に注がれている。
そんな中で、歌、ピアノ、ダンス。
さらに細かい演出の数々…
一体どれだけ途方も無い分量を覚えたのだろう、と思う。
覚えるだけではない。振り付けに関しては何度も反復練習し、体に「習得」させる必要がある。くれぐれも言っておきたいが、彼は元来ピアノの人であって、ダンスの人ではない。
Youtube上で涼しい顔で超絶技巧を披露するピアノ演奏と違い、ダンスについてはデビュー後からトレーニングを開始したと思われる。これまで培ったノウハウがないものを大観衆の前で試聴に耐えるパフォーマンスとして披露するのは、一体どれほどのプレッシャーがかかることか。
そのために、どれほど練習したのだろう…
本当に頭が下がる。
そりゃここしばらく、配信とか供給も少なくなるよなぁ…。
一方で、ファンが藤井風に求めることは多様化している。
「藤井風の声がたまらない」って人もいれば、「ピアノを弾いている姿にキュンキュンする」という人、いやいや「踊ってる風くんが一番素敵!」なんて声もあるだろう。
他にもアップテンポが、バラードが、弾き語りが、バンドメンバーとの絡みが…などなど、それこそ言い出したらキリがない。ファンの数だけフェチは存在する。
でもそれは裏返すと、「もっと〇〇する風くんが見たかったなぁ」という声にも発展するわけで。「最近〇〇ばかりで、△△はもうやらないの?」とか。
これは、ある種仕方ない。彼はここ数年で、あまりにもその魅力が多くの人に知られすぎた。その人が藤井風の何を見てファンになったかは、ファンの数だけ違うのだから。
…ただ気をつけるべきは、「それは下手すると、他を否定する声になりかねないよね」ってことで。
一例を挙げると、「もっとピアノ弾いてよ!!もうダンスは良いから!」とかね。その声は、彼のダンスが好きなファンを傷つけてしまうかもしれない。それはきっと誰より、藤井風本人が悲しむべき事態だろう。
だから我々は、このように考えていた方が良い。
すなわち、藤井風は色々なことに挑戦している期間なのだ、と。
興味の赴くまま、とにかく挑戦する期間。
若者の特権である。
たとえばデビュー30年の硬派なロックバンドが突然ダンスを始めたら、古参ファンは困惑するかもしれない。でも彼はまだまだ若く、おまけに好奇心旺盛だ。今のうちにどんどん手を出せば、今後の活動の幅も広がっていく。
それに、今回のライブが藤井風の集大成であることは間違いないけど、何もこれが藤井風の完成系というわけではない。彼は今後も色々なことに挑戦し、その度に新しい魅力を発信してくれるだろう。それは長い目で見れば、人間・藤井風の人としての深みに繋がっていく。
…いやこれ以上深くなったらどうなっちゃうの??って気はするけど。
最後にもう一つだけ。
今回のライブを見て、
「藤井風の最大の武器は謙虚さだ」と思った。
というのも、普通この規模の公演をするアーティストには、ある程度表現者としてのエゴがある。一言で言えば、「俺の世界観を見てくれ!」という圧というか。
それは決して悪いことではなくて、アーティストとして素晴らしいものを作りたいという表現欲求や、多くの人が関わる公演を成功させないといけないというプレッシャーの現れだと思う。
その狭間で、結果として素晴らしいものを生み出し、それを見たファンは「やっぱりこの人が好きだ」とさらに心酔する。それがアーティストとファンの距離感だと思う。
…でも、藤井風にはそういった圧がまるでない。
3年前に日産スタジアムでの公演が決まったときも、「自分はまだそんなレベルのアーティストじゃない」といった趣旨の発言をしたらしいけれど、彼からは自分の世界観を押し付けようとする圧とか、そういったものは一切感じられない。
世界にはたくさん素晴らしい音楽があって、その中で自分の作品こそが絶対なんて、おこがましい。…でも周りが自分を望んでくれるなら、できるだけの形で応えたい。それが彼の基本スタンスである。
だからこれまでの彼の挑戦は、自発的というよりは寧ろそういった彼を望む期待に応えるべく、行われたように思う。たとえば東京進出とか、ダンスとか、ドラマや紅白といったメディア出演とか…そして、それらの一つ一つに全力で応えようとする彼を、我々は何度も見てきた。
そんな彼だから、周りの人も力になりたいと願う。チームの一員として、自らの持てる全力を尽くしたくなるのである。
…人には何も要求せず、自分は人に与え続けようとする謙虚さをもって逆に多くの人を虜にし続ける彼は、次世代のアーティスト像かもしれない。そんなことを、今回のライブを見てしみじみと思った。
だからこれからも、色んなことをやってほしいと思う。
もちろんそれらの試みは、ホームランばかりではないだろう。三振もあるし、超特大ファールもあるかもしれない。…でも、それで良い。
やってみて、新たな仲間と出会って、時には失敗しても、「あれは違ったな」と笑い合って、「じゃあ次はどうしようか」とまた前を向いて。そんな健全なプロジェクトの中心に、藤井風がいる。それはどんなに素晴らしいことだろうと思う。
…ただ一つだけ、心と体の健康だけは損なわないでいて欲しい。
爆発的に多くの人に認知された彼をめぐっては、世界中で多くの発言が飛び交うい、中には心無い声も。でもそういったしょーもないノイズに惑わされず、仲間と笑いながらどんどん面白いことをやってみてほしい。
そんな藤井風および彼をとりまくチームを、僕は支持します。
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