童貞消失、かもしれない話
中学3年生のころ、ご多分に漏れず、彼女が欲しくてたまらなかった。
その頃僕は、心の底から童貞だった。
別のクラスにユキちゃんという子がいて、しゃべったことはないけど、なんとなく顔がエロくて好きだった。
その年の冬、ユキちゃんのメールアドレスを入手した。直接話しかけたり、連絡先を聞く勇気などないので、友達伝えに。
メールなら大抵のことなら送ってしまうことのできる自己中心的童貞特有の能力をもっていた僕は、メールし始めた次の日に、付き合いたいとメールを送った。
意味がわからないのだが返事はOKだった(後々聞く話によると彼氏に振られたばかりでさみしかったようである)。
そうしてメールでさっそくデートに誘ったところ、さらに不可解なことに、僕の家に来たいと返信がきた。意味が分からな過ぎて、舞い上がるどころか心臓がバクバクしすぎて何も考えられなかった。
風呂に入り、寝間着に着替え、電気を消してベッドに横になって目を閉じたら、ベースボールベアーの「17歳」が頭の中に流れた。
週末、家の近くの田んぼで待ち合わせして家に来て、家族に軽く紹介し、僕の部屋で初めて彼女と会話した。
そこで不思議な現象である。彼女と会話している気持ちになれない。
僕の方は女子とまともに話したことがないから何を話したらよいか分からず、彼女は昨日見た夢の話だとか、僕は興味がないアイドルの話とかを延々とする。感情移入できない恋愛映画を見ているようだった。確かに彼女はかなり可愛い。学校で見かけるとユキちゃんの周りだけ空気が澄んでいるように見えた。しかし、そのときは彼女は、人形か、ロボットのように見えた。
床に座ってしばらく会話をしていたのだが、彼女がトイレに行くといって立ち上がろうとした際、ミニスカートの中が見えた。
そこには、キティーちゃんの顔が大きく刺繍された毛糸のパンツがあった。
むちゃくちゃ嫌だった。
すべての幻想が打ち砕かれた僕は、童貞ではなくなった気がした。
4コマ漫画「怖いおじさん」