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トランプが勝った理由がわからない人々

日本の衆議院議員選挙、そして米国の大統領選挙とたいへん注目して眺めていた。もちろん、一有権者としては投票にもいくのだが、そんなこととは別に何かが変わり始めていると思わされることが多かった。

米国の二大政党制

米国は1828年くらいから実質の二大政党制だそうだ。二大政党というのは、いうまでもなく今日の共和党と民主党。だからといって、その2党しかいないわけではなく、その他にも党派はあるそうだが、存在感は薄いそうだ。

私が見た米国人

トランプが大統領だったとき、米国人と話すと、彼らは、トランプが大統領であることを強く恥じていた。すくなくとも、口頭でははっきりそう言っていた。それもひとりやふたりではない、話したことがある米国人の90%はそうだった。そのときは、「へえ?トランプってよくない大統領なんだ?」などと呑気にとらえていたのだった。

共和党と民主党それぞれの支持層の深刻な分断

これは両党の支持層を調査データ(Pew Research Center, Gallup, ANES等)から分離してみる試みで、ちょっと無理やりなところもあるかもしれない。が、敢えて。

・地域
共和党:農村部、中西部や南部(テキサス州、アラバマ州)
民主党:都市部、西海岸、北東部(ニューヨーク州、カリフォルニア州)

・宗教
共和党:プロテスタント
民主党:カトリック、ユダヤ教、その他

・教育水準
共和党:高卒やそれ以下
民主党:大卒以上の高学歴、修士、博士取得者が多い

・収入
共和党:中所得から高所得層 ただし高齢者や中小企業の経営者が多い
民主党:低所得、若年層、都市部の労働者、学生

・人種
共和党:白人
民主党:アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック、アジア系アメリカ人など

・思想
共和党:保守(小さな政府、減税、銃所持の権利、反中絶、伝統的家族観)
民主党:リベラル(社会福祉拡充、移民権利保護、環境保護、LGBPQ権利擁護)

・職業
共和党:経営者、農業、軍、石油、ガス
民主党:教育、医療、テクノロジー、芸術

民主党支持者には共和党支持者が見えていないのか

ここまでで述べてきた民主党支持者と共和党支持者は、それぞれのペルソナが明確に異なっていることがわかる。昨日まで保守だったけど明日からリベラルね、とはなりにくい。それほど違う。

典型的民主党支持者というのは、
ユダヤ人やアフリカ系であって、ニューヨークやカリフォルニアにいて、大学を卒業していて、自分たちは知的だと思っていて、環境問題やLGBTQ問題に関心がある、人たちということになる。

そして典型的共和党支持者というのは、
白人であって、学はないが、昔ながらのビジネスや会社を経営していて、田舎に住んでいて、銃を所持する権利にこだわる、人たちと言ってみよう。

共和党支持者から民主党がどう見えているかと言えば、平和を叫び、増税し、他国の戦争にも口を出し、LGBTQの権利を擁護する、テレビで見るエリートたち、のようなイメージだろう。いわゆるビッグテックの人たちも多くは民主党支持だし。あのイーロン=マスクを除いては。

問題はその逆だ。

民主党支持に偏っているCNNは、選挙期間中も元気に偏向報道をしていたが、民主党の敗北がほぼ確定的となったとき、「なんで負けるのかわからない」「民主主義の敗北だ」「低学歴が共和党に入れるんだ」と宣った。

炎上してたからご存じの方もいるはず。

それはもう、民主党を支持している自分たちはエリートだと思っていると言ってしまったようなものだ。学歴ももちろん一つの属性だから、何かを説明するパラメーターとして有効に機能することが多いの事実だ。例えば、共和党支持者に高学歴が少ないことは、複数の調査でもはっきりわかっていることではある。単なる事実。

しかし、エリート意識のある人たちには、
田舎で、学もなくて、古いビジネスをして生きているアメリカ人の姿など見えていなかったのかもしれない。

それでも、見えない人たちは確かにそこにいる。そして、数の論理でもそれに、負けたのだ。

本来、リベラルというのは多様性を受け止め、機会の均等だけではなく結果の均質化にまで操作をすることもある。しかし、恐ろしいと思わされるのは、彼らにとってLGBTQという性的マイノリティ(マイノリティと言っても10%強存在するそうなので珍しいというほどでもないようだが)には配慮しても、田舎の低学歴な共和党支持者の想いや考えは、「低学歴のアホ」で片付けてしまっているようで、壮大な自己矛盾を露呈してやしないか、と思うのだ。

別の機会に掘り下げたいが、リベラリストこそ異なる意見を排斥する現象はなぜ起きるのか。それは真のリベラルではないからなのか、それともリベラルという思想潮流自体が成長途上なのか。





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