音楽が売れていた時代に感じていたこと
学生時代、Nifty-serve(懐かしいですよね、パソコン通信)のコミュニティでちょっと話題になったことを思い出しました。
ヒットを「狙って」作った曲は良いのか悪いのか?
当時はCDの売り上げが絶頂だった時代で、ミリオンヒットどころか、ダブルミリオン(200万枚)のCDが連発されていました。同時に「プロデューサーの時代」とも言われ、今も名前が知られる大物プロデューサーが数多くのアーティストをプロデュースし、メディアとタイアップしたシングルがチャートを席巻していた時代だったのです。
当時から僕は「売れることを狙って作られた曲ってどうなの?」という立場でしたが、一方で「求められるものを創って売るのは悪いことじゃなくて、商売の王道なんじゃないか?」という意見もありました。この言葉にも一理あるような気がして、当時の僕はちゃんとした反論ができませんでした。
当時のチャートを席巻していた曲は、
①「売れる要素」を分析によって割り出し、その方程式にのっとって作曲されたもの
②海外で流行し始めた新しいスタイルを日本に持ち込み、日本でのブレイクを狙ったもの
という、大きく二つのスタイルだったものが多かった気がします。
①確かに耳触りは良い(だから売れる)のですが、これは革新性には欠けます。また、そのタネがわかってしまえば同じようなスタイルの曲を作ることはさほど難しくないため、似たような曲が巷にあふれることになり、程なく聴衆の感性も飽和します。
②確かに新しいものは珍重されますが、スタイルに依存した音楽はやはり容易に量産が効き、すぐに似たような曲が溢れ、やはり飽和に向かいます。
この現象によって、アーティストの個性を活かした曲作りよりも、「売れるスタイルの曲を作ること」に力点が置かれるようになり、結果残るのは似たような特長に乏しい曲ばかり。粗製乱造されることによってクオリティも下がります。
何よりもアーティストの「このメッセージを歌いたい!」とか「こういうサウンドを作りたい!」とか、「新しいスタイルを世に問いたい!」という曲を作る上での根源的な欲求を必要としないやり方は順序が違うのではないかと思っていたのだと思います。
また、主としてCMやドラマのタイアップで視聴者への接触回数を増やすことで販売を伸ばそうとするやり方はあまりに効果的であったがために、曲の質は二の次三の次となり、粗製乱造に拍車がかかりました。
①にしろ②にしろ、「売れるもの」を狙えば「後追い」なわけで、それを続けていくと新しいものは出てきにくくなります。その結果が今の音楽不況の一つの原因になっているのではないかな・・・と思っています。
私も曲は作りますが、商業ベースに乗ったことはないし、業界内部にいたわけでもないのであくまでも私の推測であることをお断りしておきます。
ピーター・ドラッカーは「顧客の創造がビジネスの目的である」と言いましたが、ミュージシャンやレコード会社のスタッフが新しいスタイル・サウンドを発見・発掘し、それを社会に提案して新しい優れた音楽を拡げることで売り上げを上げていくことが理想なのではないかと思うのです。
必要とされるものを創る、ということも商売の王道でしょうが、ニーズを新たに生み出すモノづくりをする、というのもやはり王道なのではないでしょうか。
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