【コラム】虚実の境界線で遊ぶ
毎月コラムを読んでいただきありがとうございます。
ガブリエールまっすーです。
私がアイドルに魅せられて10年以上が経ち、ファンとして、業界の関係者の端くれとして、様々な現場を経験してきました。
アイドルの何がそんなに私を突き動かすのか。私のすべての原動力の源は、「アイドルとは何か?」という問いに対する探究心です。
「ライブが楽しい」とか、「アイドル関連の仕事で自分も成功したい」という動機よりももっともっと本質的で根っこにあるもの。
それはこの「アイドルとは何か?」という問いに対して、自分なりの答えを死ぬまでに出すことです。
だから私はライブにできるだけ足を運んだり、いろんな音楽に触れたり、業界の内側に入って仕事をしてみたりしながら、人生をかけてそのための材料を探し集めているんです。
おおよそ常人には理解されないかもしれないですが、これが私の生きる意味であり、目標であり、最優先事項なんです。
そして、今回のコラムはこの問いに向き合ってきた私の現時点での中間発表にさせていただければと思います。
アイドルとは
アイドルとはズバリ、虚実の境界線上で遊ぶエンターテイメントです。
ここで、アニメと、現実世界での恋愛とそれぞれ比較して考えてみましょう。
例えば、アニメというのはフィクションです。人間が1から考えた創作であるからこそ、理想の美少女を作画したり、感動的なストーリーを雑味なく描くことができます。
その一方で「そんなの実態がなくて、嘘っぱちだ」と言われてしまえば反論することはできません。
続いては現実の恋愛です。現実というのはアニメのようにキラキラしてはいません。生々しくて、トラブル続きで、地味で、思うようにはいかないものです。伏線がちゃんと回収されるかもわからないし、ハッピーエンドが訪れるかもわかない。
だけどそこには本当の愛情があり、血の通った幸せがあるような気がします。
ただ「お前の彼女よりセーラームーンの方がスタイルもいいしかわいい」とか言われちゃうと、客観的にはそれはそうなんでしょう。現実は完璧ではないですから。
そして、アイドルはというと、ちょうどその中間。リアルとフィクションの狭間で揺れているものなんだと思います。
アイドル運営というのはまるでアニメ作品を作るかのように、普通の女の子にキャラを与え、感動のストーリーを創作する一方、現実的にお金のこともシビアに考えなくてはいけない。感動のストーリーを描いたつもりが、そこにファンが乗ってこないかもしれない。
アイドル本人のダンスや歌に対する努力、ワンマンライブでの涙はリアルかもしれないけど、特典会での笑顔やSNSに載せる自撮りには嘘が含まれているかもしれない。
ファンにはどこまで本当で、どこから嘘かわからない。
虚実の境界線の上で振り回されながら、熱狂に巻き込まれる。
それがアイドルの面白さであって、醍醐味なんだと思うのです。
これは大昔に能を大成した世阿弥が風姿花伝で「秘すれば花なり」という言葉を遺していたり、人形浄瑠璃で名を馳せた近松門左衛門が虚実皮膜論という考え方で似たようなことを言っているので、おおよそ的を得ているのではないでしょうか。
そしてアイドル業界のトラブルというのもまた、虚実の境界線上で起こっているようです。
○○ちゃんに熱愛が発覚したとか、配信系のコンテストが出来レースだったとか、虚実の境界線が曖昧性を失ってしまったとき、ファンは悲しみ、怒り、呆れてしまう。
そして、このように現実で生々しい話をドーンと突きつけられるのもキツイけど、「こりん星から来た」みたいなフィクション全振りの設定を「果たしてこりん星は本当でしょうか?嘘でしょうか?」みたいな顔で来られても厳しいものがありますよね。
やっぱり現実なのか、虚構なのかわからないうまいラインで、信じたり騙されたりしながら、その前提を認めて遊ぶのがアイドルというものなんだと思います。
アニメキャラに恋をするのか、リアルの彼女に惚れるのか、アイドルに沼るのか。
幸せは人それぞれだと思います。ただし何に惚れるかによって、惚れ方の作法があるということです。
アイドルにガチ恋しちゃうような人は、自分を磨いて健全に一般の恋人を見つけた方が幸せになれるんじゃないかな。
P.S.
最近、世間とは1年以上遅れて「推しの子」にハマっています。
まだ最後まで観てないんですが、アイドルの嘘がひとつのテーマになっていて、それを”アニメ”作品として描いていて、今度は齋藤飛鳥で実写化されて…。
まさに虚実の境界線がぐるんぐるんに張り巡らされているなかで泳がされているこの状況を、アイドルが好きな私は存分に楽しんでいます。
あと先週放送された金スマのアイドル特集の回で、早見優さんが令和のアイドルたちに「虚像と上手く付き合う」というアドバイスを送っておられまして。
私から見えている「アイドルとは何か?」の問いに対する考察は思ったより間違ってはいないんじゃないかと思う今日この頃です。
まだまだ人生長いので、アイドルの探究の旅を続けていきます。
推しの子のネタバレだけはしないでね!ダメだよ!
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