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【コラム】地下と地上の境界線

地下アイドルと地上アイドルの境界線はどこなのか。
アイドル界隈にいると、幾度となくこの話題に遭遇します。
たいていは明確な答えが出ぬまま、平行線の議論が続くばかり。
おそらく唯一無二の正解などどこにもない。
そんな問いに答えを出そうとすること自体が無意味だと思うのです。

以前、アイドルには全く興味のないという60代のおっちゃんと話していたとき、テレビに映るエビ中を見て「地下アイドルがでてる」と仰ってました。

反論したい気持ちをぐっと押さえて黙っておくことにしました。
実際、世間一般の感覚というのはこの程度なんです。
乃木坂46やAKB48は知っているけれど、そのおっちゃんはエビ中を知らなかった。
知らないのに地上や地下の評価をくだすことなど不可能なのです。

地上と地下の境界線は、その人のアイドル業界への解像度による。
それが全ての答えです。

アイドルをある程度知っている層であっても、せいぜい武道館クラスのグループまでしか見えていない人と、集客5人を目指して努力しているアイドルを身近に感じている人では解像度が全然違いますね。この2人で地上と地下の境界線を議論したところで納得した答えを得られないのは明らかです。

しかし、これだけではコラムとしてつまらないと思うので、私個人の見解も述べてみたいと思います。あくまで絶対的な指標ではございません。

私の思う地上と地下の境界線というのは、パフォーマンスのみで食えるだけのお金を生めるかどうかです。

アイドルビジネスで売上を出すポイントとしては、握手会やチェキ会などの人間関係由来の疑似恋愛的なものと、ライブチケット収入やメディア出演のギャラなどパフォーマンスやスキルに由来するものに大きく二分されます。

地下アイドルはファンの総数が少ないので、目の前の1人1人の動員が重要になります。
だから1人1人の目を見て熱量を伝え、ビラ配りや日々の配信で人間関係を築き、好きの魔法をかけていく必要があります。

一方で地上アイドルは、楽曲そのもののクオリティや、歌唱とダンスのパフォーマンス、個の人間関係がなくとも生で見たいと思わせる圧倒的なオーラで何万人という人を集客できるのです。

地下から地上になるということは、仮に特典会を一切なくしたとしても(実際に接触イベントを辞めるということではなく)、チームのメンバーが食えるようになることだと思うのです。

この考え方でいうと、コロナ禍とビルボード評価により窮地に立たされ、リストラともとれる卒業ラッシュが止まらないAKB48を”地下アイドル”と分類する人がいるのも一理あるのではないでしょうか。

地上の界隈では、グループ内で推し変されて病んだとか、ほかのグループにファンを奪われたという人間関係由来の話題はあまり聞かなくなりますね。そんなの気にならないくらい、胸を張れるパフォーマンスができるようになったら立派な地上アイドルですね。

……ここまでが私の持論です。

絶対的な指標ではありませんが、比較的腑に落ちやすい考え方ではないでしょうか。

ぜひ地下と地上の境界線の所在についてみなさんが問い直す足掛かりにしていただければ幸いです。

これ以外にも、歴史的に”地下アイドル”という言葉が生まれた経緯を遡ってみても面白いでしょう。
アイドル運営が戦略的に”地下アイドル”というフレーズを使用し、ブランディングするケースもあり、その意図について考察するのも面白いです。
あるいは過去のインタビューでアイドル当事者が、この問いをどう解釈しているか、調べてみると新たな発見があるかもしれません。

難しいことはいいから「あーだこーだ」と議論する時間が楽しければいいんだよという方は、アイドル文化への解像度が近いお友達を相手に選ぶことをおすすめします。

くれぐれも喧嘩になりませぬよう。


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