東圧ピートケミカルという会社が気になって仕方がない件
北海道出身なのでどうしても北海道の企業が気になりがちなのですけども、今日もそんな話です。
先日(22年10月半ば)、北北海道を車で回ってサロベツ原野にも寄った際に、サロベツ原野で泥炭(ピート)を採掘するための船、というのが放棄されていて、広々とした曠野にメカメカしい船が錆びて打ち棄てられているそのイメージに圧倒されてしまいました。
ポストアポカリプスっぽさというか、過去の文明の異物を発見したけど何のためのものかわからない的なシチュエーションを思わせるような感じというか、ひどく想像力を掻き立てる種類の佇まいです。
この日は晴れてましたけど、曇天や雨天だったらもっと雰囲気あったでしょうね。
で、これは放置されているわけではなく、現地はサロベツ湿原センターというサロベツ原野に関する展示等を行っている施設があり、その展示の一部をなしているわけですけど、そもそもサロベツ湿原センターも泥炭採掘船もなんでこの場所?と思って国土地理院の地図や過去の航空写真を見ると、まさにここに1970年代に社屋と工場らしき建物が設置され、採掘されていた様子がうかがえ、ああ、そもそもここなんですねということがわかります。
さて、私もこんな職業ですから、ではこの事業をやっていた会社はどこか、というのが気になるわけで、「豊富町字サロベツ」「泥炭」「ピート」などといった単語で検索して、三井東圧(現・ 三井化学)系の東圧ピートケミカルという会社が同地にあって採掘をやっていたことに辿り着きました。
過去の三井東圧の有価証券報告書でも関連会社に東圧ピートケミカルの名前を確認できました。
東圧ピートケミカルとしての決算公告等は見当たらず、財務情報はわからないのですが(三井化学のIRに聞けば出るかもしれませんけど)、色々検索するとなんとなく垣間見えるものがあります。見るべきものとしては『クリーンジャパン』(16),クリーン・ジャパン・センター,1979-05.ですかね、ここに東圧ピートケミカルの工場長の記名記事があり、そこに1970年に工場ができたこと、草炭を水洗分離して(3枚目の写真が水洗分離機です)、液体飼料の吸着剤に用いていること、冬期には操業できないので廃ポリ袋の再生や海藻肥料の製造を行っていることが書かれています。
また、サロベツ湿原センターの展示では吸着剤以外の用途として、廉価な燃料や土地改良資材などに用いられていたようなことが紹介されています。
(展示資料に色々書いてあったのをもっとちゃんと記録してくるべきでした)
また、油の吸着剤としては、海洋汚染防止法による商品の承認が必要だったようで、検索すると、『排出油防除資材について(2) ―油吸着材―』,近藤五郎,環境技術/9 巻 (1980) 6 号などで東圧ピートケミカルの名前が確認できるほか、官報でも昭和 53年11月18日運輸省告示第588号に
というのが出てきます。その後、平成11年4月23日には同型式が抹消されている記録がありますので、この油吸着材の商用期間は1978年から1999年の20年強、ということがわかろうかと思います。
というわけで進撃の巨人のエレンの「調査兵団に入って・・・とにかく財務を分析したいです」のような勢いで東圧ピートケミカルの財務情報を入手して分析したい欲が高まっていたのですが、『平成20年度サロベツ自然再生事業泥炭採掘工場資料調査業務 報告書』特定非営利活動法人サロベツ・エコ・ネットワーク, 平成 21 年3月に、
とあって、PDF見ると成果物のリストがありますけど、そこには経理・会計・決算に類する資料が含まれておらず、廃棄した方の資料に決算関連の資料があったんじゃないかな感があって非常にやきもきした次第です。なんとか手に入りませんでしょうかね。。。
それにしてもつい最近まで国立公園で穴掘ってたとか今の環境に対するスタンスからすると考えられない感じもありますが、せっかく泥炭掘るのならウィスキーを作っていてほしかった・・・などと思いつつ。