北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線のこと(初めての同人誌)
仕事では現在、テック系のぴっかぴかな会社さんたちを担当させていただいておりまして、それはそれは色々と学ばせていただいておりますが、赤字ながら高成長で資本市場に対するアクセスが良好な会社を多く見ている関係で、テクノロジーとビジネスモデルとポジショニングとTAMと、というような収益の期待値の話題に、ファイナンスはEV/SalesとかEV/ARRとか5年後のサステイナブル営業利益率あたりを使ってバリュエーションして、とかそんな話題にどっぷり浸かっております。で、一息つこうと思ってtwitter見たらやれ投資銀行がどうだPEがどうだVCがどうだコンサルがどうだ商社がどうだから始まって、毎日毎日キャリアだの年収だののマウンティングに事欠かない感じですし、自分の知悉したあたりでもバイサイドがーセルサイドがーと喧しく、それは自分の先々の人生を考えるとある程度は知っておきたい話だったりするんで、まあいいんですけど、そんな話ばかりではちょっと疲れたりします。
なもんで、たまにはそういうぴかぴかな世界から離れたところでバランス取ってリフレッシュしたいなんて思うこともあって(レジャーでリフレッシュしたいんではなくて仕事内容でリフレッシュしたいというか)、推奨やバリュエーション関係なく、普段見ない知らない産業の企業でも分析しようか、となりがちなのですが、昨今は機関投資家や証券会社向けではなくて個人向けでも上場企業なら様々な分析ツールが世の中に出回っていて、何かわざわざやるまでもないな、という感じでもありますし、そもそも職業柄、自分の担当業種はもとより、上場企業についてあれこれいうのも面倒の起こらない話でもないので、ここ数年は未上場企業や過去に閉じ込められた企業の財務分析を好んでするようになりました。
※Cygamesやアニプレックスを良く取り上げていたのもそういう理由もありましたけども
※そういう意味では、昔から私を知ってる人ならアーリーリタイアメントできたら学校に入り直したいという意味のことを言ってたのを覚えているかもしれませんが、それは例えばシティの銀行アナリストだった野崎さんのように大学で教鞭を執るような方向ではなくて研究の方に行きたかったわけですけど、経営史の方に完全に興味が向いた、といいますか。
そんな研究したいテーマのひとつに、JR北海道がどうなるかから派生して、日本国有鉄道と鉄道建設公団→現JRTTと国鉄清算事業団とJR各社の分析、みたいなのもありまして、要するにあの民営化は財務的にはというか我々の業界の目線で見て何がどうなったかを整理してたりするんですけども、ちまちまとデータ入力したり整理したりして、そろそろ色々アウトプット出せそうかなという感じになってきました。
で、じゃあ、これを誰にどういうふうに訴えたいかを考えた時に、経営史学会とかの学会誌に投稿?noteで記事(有料か無料はさておき)?Amazonで電子書籍?ああでも、そういえば他のテーマでやってる趣味モノは同人誌で出したくなるだろうし、自費出版というか同人誌だなと思って、とりあえず試しに同人誌を作ってみるかー、となった次第です。
初めて作るので、シンプルな内容でシンプルに作ってみたい、ということで、国鉄・JR北海道というテーマから派生して、1989年から2006年まで池田町と北見市を結んでいた第3セクター鉄道、「北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線」をまとめてみることにしてみたんですけども、、、、
実際はシンプルに簡単にまとめるはずが、決算数値のインプットから始まって(これは工数が想定できる)、勘定科目の理解(これもまあ鉄道事業会計規則ですしね)、国鉄改革と第3セクター鉄道に関連する法制度やそれに基づく自治体と政治家の動向の理解(40年くらい前の話なのでなかなか大変)、決算数値がない年度の決算の推測、KPIの解釈、事象と財務諸表の数値の整合性、新聞報道にある数値との整合性などなど、疑問点をひとつひとつ潰していったら全然シンプルでも簡単でもなく「とりあえず試しに」というレベルには収まりませんでした。
せっかくなので普段は頭で理解すれば十分な、いちいち文章に落とし込まない各勘定科目の数値とKPIに関する考察をあえて文章化するということもしていて、カバー予定の上場企業の分析であれば、決算情報と統計と法制度・会計基準と報道などから数字の詳細を見ていって、疑問点を洗い出し、IRに質問しにいくまでの段階のものをすべて文字化した、というようなものではありますが、既に(しかも10年以上前に)清算した会社で、情報がどうにも手に入らないし、IRに聞けるわけでもないので、文献史学とかミステリーのトリックでも解くように各勘定科目について独りで納得できるところまで推測する、という作業をした格好です。
そういう意味ではコタツ記事みはありますが(北見市に古い資料いただけないかお願いしたりはしているのでそうではないんですけども)、コタツ論文と呼ぶなら呼んでもいいけどそう呼ぶのなら実際にここまでできるか試してみたらいいよという感じです。
※もし当時の当事者が見たら間違っている点もあるかもしれません。万一そういう方に届くようなことがあれば是非間違いをご指摘いただきたい(答え合わせをしたい)と思っています
そんなわけで、市場も売上もマイナス成長、どうやっても黒字化の目処が立たず、エクイティもデットもファイナンスの道が閉ざされていた会社を分析したことは、若干自己満足気味なところもありましたけど、良いリフレッシュではありました。役に立つか立たないかで言えば、まあtwitterなんかでもJRの赤字やらなんやらが報道されるたびに右も左も昔を知っている人も今しか知らない人も、やれ国鉄のままの方がサービスが良かっただの(←いやどれだけ逆立ちしてもそれはないでしょw)、やれ3セク化すれば成功するだの、3セクで成功したケースがあるだの、色々流れてきますけど、正直、第3セクター鉄道の事業スキームちゃんと理解して議論している人はほとんど見当たらないし、成功しているように見える第3セクター鉄道は本当に成功しているのか、そもそも最低限のものとして直接の事業体の財務分析すらせずになんで営業(経常)赤字とか営業(経常)黒字とかだけで議論するのか、それ以上にスキーム全体把握して資金の流れ見ようと誰も思わないの?と思ったりするので、国鉄の赤字ローカル線を第3セクター鉄道化したところの経営状態をどう把握すべきかを知りたい方には役立つ一冊ができたのではないかと自負しています。
ということで、印刷して本らしい形にしてみる、ということもしましたので、1冊1,000円(本体630円+送料370円)でBOOTHさんで販売させていただくことにしました。
→ マッシナレポート 北海道ちほく高原鉄道の財務分析
※先々のことを考えてサークル名というか個人事業で屋号つけるとか法人化するなら社名考えなきゃいけないんですけどどうしましょうかね。
チラ見したいとかあるでしょうし、論文ぽいならアブストラクト要りますよね、ということでアブストラクト(500KBちょいのPDF)はこちら↓
とりあえず試しにということもあって50冊くらいです(50冊でも多いかもしれない)。
あと、読んだ方で質問や提案やお願いや何やかや連絡取りたいという方がいらしたらtwitterまでお願いできればと思います。
それから、これを読んでこの地域に興味を持った方はぜひとも帯広や北見を旅行してみてください。できれば春か秋に。美しい土地です。
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