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群馬県はイタリアを超えるパスタ天国?
群馬県を行ったり来たりしている多くのイタリア人の友達は、日本在住者だろうが観光客だろうが、大体口から出てくる一言が全く一緒だ。
群馬県の麺がうまい!
これ以外の感想を聞いたことがない。
ある日本在住イタリア人の友達から「美味しいパスタを見つけたよ」と連絡があって送られた写真を見たらひもかわうどんだった。100%群馬県小麦を使用しており、うどんとしてのクオリティが高い。しかも、茹でてもソースに絡めても食感が落ちない。イタリア人の口に合う「アルデンテ」で違和感がない。
イタリア人にとってのアルデンテ(直訳すると「歯応え」)は、芯が残っているという意味だけではない。 生パスタ・乾燥パスタに限らず、良いパスタには麺自体にコシがある。コシがある麺はどんな調理加工をしてもおいしくて、最高の食事の時間を楽しめる、ということだ。
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ひもかわうどんは僕の感覚的には、イタリアのtagliatelle(タリアテッレ)やpappardelle(パッパルデッレ)に近い。1番大きな違いは麺を作る過程で卵を使用するかしないか。イタリアの一般的なパスタは真っ黄色なのは卵の黄身が使われているから。少しオリーブオイルを加えることもある。ひもかわうどんは水と小麦粉と塩のみで作られている。
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ひもかわうどんなど平たい日本の麺は、5.0mmから15cmを超えるものまで様々な幅が存在する。パスタ大国であるイタリアから見ると、イタリアにありそうでないこの太い幅を見て驚く。驚きながら買ったりその場で食べたりして、実際に体験することで「これが日本のパスタか!」と、驚きが興奮や喜びに変わる。
イタリア人にとって日本の麺が新鮮に感じる中で調べていくと、実はそもそもの小麦文化はイタリアと群馬県の強い共通点であることを発見した。
群馬上毛新聞によるとイタリア料理店の多い都道府県は
1位 群馬(店舗数 10.3)
2位 長野(店舗数 10.1)
3位 東京(店舗数 9.8)
4位 山梨(店舗数 8.2)
5位 福井(店舗数 8.0)
全国平均 6.0
イタリア料理と言えばパスタ、群馬県の名物と言えばひもかわうどん。
どちらも小麦ということできっと二つの土地は仲良くなれるに違いない。現に、群馬県ではイタリア料理店が多い。この結果を見て、きっとイタリアでひもかわうどん専門店を出したら流行るだろうな、と思い付いて笑みが溢れるのだ。
群馬県の中でも特に高崎市はパスタの遊園地と言っても過言ではない。群馬県ではパスタがどのぐらい人気かというと「キングオブパスタ」というイベントが生まれた、といえば分かりやすいだろう。
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キングオブパスタは、高崎を中心とした周辺地域における小麦文化と豊かな農作物に育まれた食文化を、パスタを通じて再認識するとともに、高崎の食文化の更なる発展を図ることを目的としています。
イタリアの伝統的なパスタも日本人がアレンジしたパスタも一つの空間になっていて、国境のない場所になる。
ではなぜ群馬県は麺を食べる文化が強くなったのか。日本といえばお米がメインと言われている中で、小麦の文化が広がった理由を調べ出したら「なるほど」となった。
群馬の冬は日照時間が長く、新潟県境や北部の山々から乾燥した冷風「からっ風」が強く吹く。乾燥した気候で水はけのよい土壌であることが小麦づくりに適しており、小麦の生産が盛ん。特に秋に収穫された米の後に小麦を栽培する二毛作が行われている。こうした背景から群馬県では、「おっきりこみ」や「すいとん」、「炭酸まんじゅう」など小麦粉を使った郷土料理が多く根付いており、長い時間をかけて粉食文化を発展、定着させてきた。
現在も群馬県内では多くの小麦が生産されており、近年では県独自で開発、育成された品種も生まれた。平成10年に県内で育成された「きぬの波」は、日本麺用の小麦粉。「水沢うどん」や「ひもかわ」、「館林のうどん」などの多様なうどんが作られている群馬ならではの品種となった。また、平成20年に育成された「さとのそら」は、日本麺はもちろん菓子にも使われる品種として知られている。こうして独自の開発を進め、今もなおさらなる粉食文化の発展が進んでいる。
ところで、ひもかわうどんという名の由来は何だろうか。
うどんは日本全国にある中で、ひもかわうどんの形は意外と珍しい。紙のような、帯のような形に見えることが多い。これが後にヒントとなる。
群馬県桐生市は桐生川を中心に、機織りや縫製などの繊維産業が栄えた「織物の町」だそうで、和装の帯も多く作ってきた。この町に、まるで帯のように平たいうどんが生まれた。「帯が川で洗われる様子から」このような形になった、など諸説ある。
ますます、食べたくなる。いや、群馬県に行きたくなる。現地で食べたい。
群馬県によく遊びに行っているイタリア人の友達がこう言っていた。「日本料理を食べながらパスタの楽しさも味わえる。しかも、イタリアのパスタ料理と比べたら低カロリーで重くない」と。
最後にこの友達のエピソードを紹介しよう。友達がひもかわうどんを初めて見たとき興奮しながら「これでラザニアにも作れるよね!」と言われて、素敵なほっこりする思い出になった。
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友達が毎年の冬にひもかわうどんを味噌煮込みにして、ビールを飲むのが習慣になったそう。いつもこの時期になると報告をくれる中で食事のお誘いもあって、行ける時間がなかなか取れないけど、いつかイタリア人の友達が作ったひもかわうどんの料理を食べたい。
この記事を読み返すと、イタリア人はパスタさえあれば幸せに生きられるのではと感じる。日本ではこの群馬県の麺がイタリア人にとって、喜びの種になるだろう。
Massi
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