♯13 羨望の派遣会社ノベルティークッキー
今まで大小数多の派遣会社に登録をして仕事をやって来た。
始めは、派遣社員としてのキャリアがないことでなかなか仕事を紹介してもらえなかった。
そのため、職場で出会った派遣社員さんからの口コミを参考にしながら、とにかく色んな派遣会社に登録をしていた。
働きながらイマイチなところなど実感していったのだが、それぞれの会社によって待遇や対応が全然違うのだ。
私の経験談としては、小さい派遣会社は何かと会社としてのケアが不足していることが多くて、嫌な思いをすることが多かった。
そのため、長期の仕事を続けられるようになってからは、組織がしっかりしている大手数社でしかお世話になっていない。
同じ仕事に数社の派遣会社からスタッフが派遣されるなんてことも派遣あるあるなのだが、
会社によって時給が違ったり、担当者のサポートが違ったりすることはよくある。
ある企業に派遣されていた時、
私だけが派遣会社A社から、他の派遣社員さんはみんなB社からの派遣スタッフだった。
B社の営業担当者は、頻繁に企業の担当者とも連絡をとっているようで、私は企業からの連絡事項などもB社のスタッフさんに教えてもらうことがほとんどだった。
更新のタイミングでは必ず業務中に来て、1人ずつ呼んでじっくり面談をされていた。
そして、毎回スタッフに派遣会社のお菓子やお弁当箱などのノベルティのお土産を渡していく。
それを自席に持って帰って来て、
「クッキー、意外とおいしいよねー」
「このノベルティー、なかなかかわいいよねー」
などと皆さんが盛り上がるのを、私はただただ羨望の眼差しでみるだけだった。
時短の仕事ということもあったのだが、
私の方のA社の営業担当者は契約更新のタイミングで意思だけを電話で確認するという感じだった。
それに営業先としてもこの職場をあまり重要視していない感じがありありと感じられ、
派遣先企業の担当者さんからも
「A社の〇〇さん、最近来ないけど元気にしてる?」
と、聞かれる始末だった。
担当者が渡してくれるのはせいぜい年末に卓上カレンダーのみだった。
しかも、実はB社よりも時給が少し安かったのだ。
ある時、B社のスタッフさんが面談を終えて自席に戻ると、
「はい、これ」
と、私にノベルティーのクッキーを渡してくれた。
私が驚いていると、
「営業さんがあなたにお詫びで渡しておいてって」
その時、B社からちょっと問題のある新人派遣さんが入り、隣の席になった私は業務をだいぶ邪魔されるということがあった。
社員さんからも労われたりで、結構大変な思いをしたのだが、その人は迷惑をかけるだけかけて、あっという間にクビになった。
そのお詫びということなのだ。
決して、私の普段からの羨望の眼差しを察した訳ではない。
本当に恐縮しながら頂戴したのだが、
それからしばらくの間、その営業さんは会ったこともない私にまで毎回クッキーをスタッフさん経由で用意してくれるようになったのである。
結果、A社よりも手厚い対応をしてくれたのだ。
一度も直接その営業さんにはお礼を言えなかったが、毎回本当においしいクッキーだった。
「次は是非B社でお仕事して下さい」のメッセージはしかと受け止めていたのだが、
私は以前からB社にはすでに登録はしていて、何度も応募もしたことがあったのだ。
だが、なぜかいつも巡り合わせが良くないのか!?そこでの仕事は決まらなかった。
派遣社員として長く同じ職場で心地よく働くためには、
派遣先企業の職場環境、仕事内容、派遣会社の営業
この3つの相性が奇跡的に合うことがポイントなのだが、なかなか上手くいかないものである。
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