♯17 ドラマの世界だけではない！噂のスーパー派遣さん？

ある企業で就業していた時に、繁忙期の短期間だけ派遣されてきたタツナミさん(仮名)という派遣スタッフさんがいた。
タツナミさんは昼からは別の企業に長期で派遣されていて、午前中だけ集中して作業して帰られるということだった。

いつもオシャレな服を着ていて、持ち物はハイブランドの物ばかり。
住んでいるところも、聞くだけでもとても羨ましいところだった。
見た目にも、話を聞いている感じでも、お金に困っているという感じでは一切なく、無理にダブルワークをする必要はなさそうなのだ。

コミュニケーション能力にも長けている人で、すぐに周りの人とも馴染み、
入力がメインの仕事だったのだが、驚くべきスピードで入力業務をこなして終業と同時に
「次の企業のランチミーティングに参加するので、急ぎます！」
と、瞬く間に帰って行く…

帰った後には、
「あの人は一体何者なんだろうか？？」
と、他のスタッフさんとも不思議に思う毎日だった。

更に驚くことに、タツナミさんがある日出勤されてきて、
「実は別の派遣会社に頼まれて、今日から3日間程夕方から別の企業にも行かなくちゃならなくて…」
と、話していたのだ。

一日に3社も！？

「身体は大丈夫なんですか？？」
「仲のいい(派遣会社の)営業さんからお願いされちゃって、断りづらくて…まぁ、働くのは楽しいからいいんだけど」
「へぇーーーー」

私なんぞは、そんなに平身低頭に派遣会社からお仕事を頼まれたことなど一度たりともない。
ただただ感心するばかりだった。

すると、一緒に働く派遣スタッフさんから
“派遣社員の中には『スーパー派遣』と言われる部類の方がいて…もしかしたらあの人そうなんじゃ？”
と、いう話が出てきたのだ。

『スーパー派遣』は高スキルの持ち主で、常に切れ間なく仕事があり、引く手数多。
派遣会社の営業の態度も私達に対するソレ(★営業の私への対応は＃13参照)とは全然違うとのことだった。
どうしても失敗できない重要な就業先、他のスタッフが大きな問題を起こした直後…そういう時には、稼働するんだそうだ。
いつかのドラマの主人公の様な人が実在するというのだ。

「確かにそうかも…」
この職場も一緒に働いていた派遣スタッフの一人があまりにも無断欠勤が多くて、繁忙期前に契約を切られた直後だったのだ。

結局、ご本人に「スーパー派遣なんですか？？」と聞くわけにもいかず、事実は定かではないままに、短期間できっちりと結果を残してタツナミさんは瞬く間に職場を去って行った。

そんな話をしていると、知り合いの会社でも、ある業界の営業アシスタントのスーパー派遣さんが来たことがあるという話を教えてもらった。
大手から中小企業まで、その業界の色んな企業から「またあの人に来てもらえないか？」と常に声がかかるらしいそのスーパー派遣さんは、噂通り、仕事がめちゃくちゃ出来る人だったそうだ。
「〇〇さん！今こちらにいらっしゃるんですか！その節は本当にお世話になりました」
と、以前就業経験のある会社の人が、その会社の社員よりもスーパー派遣さんに丁寧に挨拶する様な場面もあったそうだ。

そう言えば、私も派遣会社の英会話セミナーに通っていた際(★#12参照)に、とても英語力の高い方がいたのだが、
その人に仕事を頼むために営業さんが休憩時間に廊下で待ちぶせして頼み込んでいる…というのを目撃したことがあった。
あの人もスーパー派遣さんだったのかもしれない…

改めて『仕事が出来る』とはどういうことなのだろうか？
少なくとも派遣社員においては、仕事の作業の早さやスキルの高さももちろんだが、それだけではない。
企業に入ってもすぐに溶け込める柔軟さやコミュニケーション能力の高さ、信頼関係構築力の妙、人間力の高さも兼ね備えていなくてはならないだろう。
そういう人であればこそ、派遣会社の営業担当からの信頼も盤石であることは納得である。

そんなスーパーな人が何故正社員ではないのか！？
その辺りは個人個人の様々な物語が存在するのだろう…

私のような凡人派遣社員にとっては、契約終了した後の仕事を探すのも毎回一苦労である。
絶えず仕事が舞い込んでくることの凄さにただただ脱帽である。

派遣社員もただ派遣会社に登録すれば希望の仕事が簡単にもらえるという訳ではないのだ。
自分の経歴、スキルをしっかりと整理しセルフブランディングすること。
そして、しっかりと派遣会社に自分の強みを売り込むアピール力も重要なのではないか！？と、初めて気づかされたのだ。