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♯18 Wワークで知る単発派遣の深い世界

数年間、派遣社員としてWワークをしていた。
長期で勤務している派遣先が、毎月勤務期間が限られていたこともあり、
その合間を縫って、単発の仕事に毎月複数の派遣会社を通して行っていた。

その時期、なかなか満足のいく職場に出会えず、
私自身色んな会社を修行の様に経験することで、本当にやりたい仕事が見えて来るのではないか?
と、半ばやけくそになっていたことも否定できないが…

派遣会社が数社にまたがると確定申告の準備が面倒ではあるが、
事前にちゃんと交渉しておけば、(★♯13の経験談:小さい派遣会社だと、源泉徴収票を強くお願いしないと送ってくれないなどあった。)
多種多様な職場を体験できる面白さや高揚感があった。
一か所でずっと働くよりも、むしろ私にはこのスタイルが合っているのかもしれないとも思えた。

単発派遣だと、特にひたすら同じ業務を一日かけてするという仕事になることが多い。
色々な仕事を経験したのだが、特に印象的だった業務を挙げてみると、

①身長、体重をひたすら測る仕事
某企業の健康診断のお手伝いの仕事で、身長と体重をひたすら測り、記入していくという仕事である。
背の低い私は椅子に乗ったり降りたりしながら、身長計を個人の背丈に合わせる。
「もう一回測って!」と結果に納得してくれない人も中にはいたが、概ね円滑に業務は進んだ。
ひたすら立って、声を出しながら誘導するので、体力的にはかなり消耗したが、流れ作業であったこともあり、一日はあっという間に終わっていった。

②一日書類を封入するだけの仕事
某大企業の社員に配るための書類をひたすら封筒に入れていく。
期限が決まっているので、就業中はタイトなスケジュールの中、一日黙々と入れていくのだが、
途中飽きてからの、ランナーズハイならぬ「封入ズハイ」が来る。
でも、終わってみると一日中、頭の中では「今日の夕飯何にしよう?」などと全然違うことを考えていたなと思うのである。

③一日ひたすらお礼を言われる電話の仕事
某大企業にて、就活中の学生本人に書類選考を通過したこと、次の面接に進めたことをお知らせし、面接予約を取っていくという電話案内の仕事。
「おめでとうございます」と、伝えると、電話を受けた相手はとにかく喜んでくれ「ありがとうございます」と、関係ない私にまでお礼を言ってくれるので、こちらはとってもいい気分になるのである。
また企業の人事の人たちもとても親切にしてくれ、たくさん季節のお菓子などを用意してくれ、派遣スタッフと共にお菓子パーティーをする様なフランクな職場でもあった。
電話の仕事はあまり受けない様にしているのだが、このお仕事はとても楽しくできた。

そして、仕事の内容よりも印象的なのは、単発派遣にやってくる人たちだった。

短期や単発の職場だと、そのメンバーで固まってランチタイムを取るという形になることが多いのだが、
そんな時に色々と話を聞いていると、
決まった時期に決まった単発・短期の派遣の仕事だけを毎年しているという人、
長期の仕事を探しているがなかなか紹介してもらえないので繋ぎで来ているという人、
引っ越し、留学、結婚、転勤族の妻。また介護、妊活…色んな事情を抱えていて長期の仕事がどうしても出来ない人、
単発のお仕事は、そんな個人的な事情の受け皿になっていることがわかった。

余談だが、時短の派遣であると、絶賛子育て中の主婦の方が圧倒的に多い。
子供がいない自分としては、この見えない分厚い壁で少し居心地が悪かったりもしていたのだ。

また、単発派遣に来る人の中には、単に友だちを探す目的だけで来ている人もいたり、
聞いた話では、ネットワークビジネスや宗教などの何らかの勧誘のために一期一会の単発派遣スタッフを狙っている人などもいるらしい。
私が出会った中では、大して気の合う感じでもなかったのに、
その単発の仕事が終わってからもしつこく「ランチに行こう」「遊びに行こう」などとしばらく誘って来る人がいて、面倒くさいなと思うことがあった。
妙に親切に話しかけて来る人、優しくしてくる人には、いかなるシチュエーションであっても見抜く力が必要であるなと改めて思わされた。

出会った派遣社員さんの中には、単発専門のプロの様な人もいて、
派遣会社の営業さんと仲良くなって、絶え間なく継続してお仕事を紹介してもらっている…という人も結構いた。
実際に短期・単発であればこそ、気に入った派遣社員さんに優先して仕事を紹介するという営業さんというのは少なくはないらしい。
営業さんと仲良くなる力も、それもまた一つの派遣スタッフさんの人間力の高さなのだろう。
と、同時にスーパー派遣さん(★♯17参照)同様、派遣社員はやはり自分を売り込むことに成功した人には仕事が溢れる程あることを知ったのである。
派遣社員の世界も結局は人脈の世界なのだ。

以前、派遣会社に勤めていた経験のある派遣社員さんに出会った時に、
「絶え間なく仕事を紹介してもらえるコツってあるもんなんですか?」
と、聞いてみたことがある。
その答えは特別なスキルなどではなかった。
「いくつになっても身なりを小綺麗にしておくこと」
見た目も重要なポイントなのだと教えられ、出会ったスーパー派遣さん達を見て、納得したのであった。

色んな職場を経験でき、様々な仕事ができた単発派遣ではあったが、
仕事が途切れない人がいる一方で、私自身は仕事を探す手間や新しい職場に飛び込む緊張で精神的な消耗も大きかった様に思う。
そして自分に合う仕事に出会うこともなかった。

自分は一体何を頑張っているのだろう??
そう思った時に、もう少し自分に優しい働き方をしたいな…と強く思う様になった。

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