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料理をつくるということ

 一応、食にかかわる仕事をしている。一応というのは、なんだか中途半端だけれども、自分でもうまく説明がつかない感情がある。家族や友人たちにふるまっていたものの延長にあるような料理を作っていて、お客さんに商品を提供しているという意識が欠けているからだろうか。いや、そうではなく、食事を作ることが、体をうごかすこと、例えば、ジョギングや、スイミング、あるいはギターを弾いたり、モーターサイクルに乗って旅に出たりすることと同じように思えるからだ。仕事だと割り切れないところがある。

 食べること、動くことは、暮らしそのものであり、そのまま生きていることのあかしでもあるわけで、そんな料理を作りたいといつも思っている。でも、難しくはなくて単純なことでもあるわけで、それは美味しいと自分で思えること、人が美味しいと言ってくれるものを作ればいい。

 私にとって料理をつくることは、特別のことじゃない。音楽や、映画や、モーターサイクルや社会の出来事のあれこれと同じようであり、暮らしそのものだ。

 写真は店で出したある日のカレー。ほうれん草とジャガイモのカレー、ムング豆のスープ、キャベツのアチャール、にんじんとチンゲンツァイの蒸し煮、タンドリーチキン。沖縄のとけしさんの漆の器とさじ。カップは八木由紀子さんの拭き漆、石目塗りのターリーカップ。器に力をもらっている。米や野菜、スパイスといった材料も、力のあるものばかり。私は最後にその配置を考えてるだけ、そんなかんじでいつも料理を作っている。

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