Dylanの訣別宣言
この秋 毎日寝る前に この曲を聴いている。特別に意味はない。そしてDylanに己のダメさを叱責されながら 毎夜眠りにつく。そこでこの度 この曲に関する 何かを 少し書いてみよう、と思い立った。彼について文章を書くなんて 私にとっては 神をも恐れぬ所業なのに…
Bob Dylan / Positively 4th Street (1965)
旧邦題「淋しき街角」 現邦題「寂しき4番街」
Official Audio
概要
本曲は1965年9月7日にリリースされ 全米7位 全英8位を記録。オリジナルアルバムに収録されてない Dylan初の純然たるシングル曲。同年夏のニューポート・フォーク・フェスティバルにおけるエレキギター事件以降の世間からのバッシングに対し 真っ向から対抗した痛快な曲。旧態依然たるフォークファンに対するDylanの怒りが爆発した曲とされる。皮肉たっぷりの歌詞と どこか陰のあるメロディが絶妙で 聴く者を惹きつけます。Dylanのフォークからロックへの転換期を象徴する1曲で ’60年代の彼を理解するためには必聴。
レコーディング記録
録音日:1965年7月29日
仮題 "Black Dally Rue"
ミュージシャン
Bobby Gregg (Drums), Harvey Brooks (Bass), Frank Owens (Piano)
Al Kooper (Organ), Mike Bloomfield (Guitar)
プロデューサー Bob Johnston
4番街ってどこ?
1962年から64年まで Dylanが住んでいた NY マンハッタン西4丁目を指している、というのが定説。当時のフォークシーンの中心地である。つまり そこの住民達=フォーク界の人間たちと 捉えるのが自然だろう。
この曲で Dylanは 何故”激おこ”なの?
このテーマは 私ごときが書けるものではないので 下記の書籍などを参照。
歌詞とサウンドについて
使われている単語も文も それほど難解でなく 高校生でも理解可能。律儀に韻も踏んでいるので 声に出して読むと リズムが心地よい(内容は辛辣だが)
"in someone's shoes"という言い方を覚えたのは この曲でした。
サウンドは あの”Like A Rolling Stone"の姉妹曲のようにも聴こえるフォークロック。 Al KooperのOrganがアクセントとなって Dylanの毒吐きを和らげています。
個人的感想
Bob Dylanをちゃんと聴くようになって40年ぐらい経つ。しかし、去年の来日ライブに行っても ファン歴50年以上の方が ゴロゴロ存在しており 畏れ多くて論評などはできない。だから 以下は単に感想でしかない。
この曲を初めて聴いた時から ずっと"I"の立ち位置(つまりDylanの目線)でこの曲を認識していた。「勝ち馬に乗りたがる奴」「陰口ばかり言ってる奴」「自分が何をしたらいいのかさえもわからないのに 批判だけはする奴」「口先だけ調子のいい奴」「自分の不遇を人の所為にする奴」あーいるいるこういう奴ら、嫌だ嫌だ…って思ってた。Dylanの感情爆発に カタルシスを得ていた。
でも 気づいてしまった。自分が"You"なんだってことに。Dylanに冷笑され、皮肉られ、罵倒されてるのは私だった。この曲はそういう曲なんだ、と。
あー、これまでなにやってきたんだろう、俺。馬齢を重ねて 早幾年。四十だの五十だのって 重箱じゃないんだから多ければいいってわけじゃないのに…
私の年齢になると 叱咤激励してくださる人は少なくなる。だから 毎夜この曲で 若き日のDylanにダメ出しをしてもらっている、と思っている。