世界唯一のホバークラフト(英国)に乗ってきた
私の地元大分県のホーバーフェリー復活を記念して、イギリスのワイト島とポーツマスにあるホーバーフェリーに乗ってきた。
ホーバークラフト(ホバークラフト)とは
ホーバークラフトというのはホバー(空中に停止する、漂う)する高速船のことで、アメリカ英語だと「ハバー」に近いがイギリス英語だと「ホバー」に近い。何故か大分では「ホーバー」で定着している。
ホバークラフトは乗り物やメカ好きにはたまらない構造をしている。
船体下部のスカートと呼ばれるゴムを圧縮空気で膨らませて船体を浮き上がらせ、地面(海面)との摩擦を最小にする。そして船体後部のプロペラで推進力を得て陸上から海上まで高速移動する。
自衛隊が持っていたり軍用ではめずらしくなく、今回乗ったホーバーフェリー(大分でも導入される)を製造しているグリフォンホバーワークは軍用も製造している。
イギリスのワイト島とポーツマスを結ぶ航路は1965年開始とかなりの老舗で今現在は世界で唯一の民間航路らしい。
大分ホーバーフェリーの思い出
大分ホーバーフェリーは1971年に開始され、私が子供のころはまだ現役だった。
幼い私は両親や祖父母に連れられて何度も発着場に足を運んで見学した。子供ながらに「とりあえずフェリーみせとけばこいつ喜ぶと思ってるだろ」と思っていたが、それでも結局は彼らの思惑通り、プロペラの轟音を立てながら滑っていくホーバークラフトに心を奪われるのだった。
そんな憧れのホーバーフェリーは2009年に製造元の三井造船の撤退と経営悪化を理由に終了。
子供のころ何度も発着を見学したにも関わらず、ついに私はホーバーフェリーに乗ることはなかった。
10年以上がたって私は今なぜかロンドンで働いている。ホームシックで枕を濡らしながらスマホを眺めていたら、大分のニュースにイギリスの文字を見つけた。今こそ幼少期の夢をかなえる時だ!普段は引きこもりがちだがホームシックになった人間の瞬発力はすごい。
イギリスのホーバーフェリー
ロンドンから港町ポーツマスまで車で2時間くらい。フェリー乗り場は町の中心から少しだけ離れたところにある。
周辺には芝生の広がる公園(むちゃでかい)やちょっと懐かしい感じのゲームセンター、ちっちゃい遊園地があつまっている。
受付で「行って帰ってくるだけです」と言ってチケットを買った。大人1人往復で35ポンド。歴史と趣を感じさせる待合室(優しい言い方)には地元住民っぽい人が集まっていた。
アジア人のオタクは端っこにいよう、と思って座っているとトラックが近くに止まったようなエンジン音が聞こえてきた。あれ?と思い観にいくとホーバーフェリーが待合所の横にいつのまにか現れていた。
感激しながらパシャパシャ写真を撮っていたら乗り込むのが最後になってしまった。席は9割埋まっている。バカンスシーズンではないのに結構人が多い。窓側席はもう空いてなかったので中央列に腰を下ろした。
しばらくすると船が持ち上げられるような感覚があった。会話に忙しいおばちゃんたちの頭越しに外を見ると、景色がするすると流れていく。ビーチから滑り落ちるように海に入って行った。
のろのろと走る連絡船をみるみる追い越して行く。フェリーは高速なので外に出るわけにはいかないが爽快だ。
ときどきがくんと縦揺れがあるが、ほぼ直進だけなので船酔いしそうな感じはない。
10分くらいして気がついたらワイト島の浜にいた。空気が抜けてすとんと腰を下ろすように到着するとすぐに下船が始まる。
おじいちゃんと男の子がホーバーフェリーと記念写真を撮っている。そういえば実家のアルバムに亡き祖父母とフェリー乗り場で撮った写真があったような…と感慨にふけりながら眺めていたら、船員のおばちゃん(チケット売り場にいた)に「帰りの受付はあっちだよ!!」と教えてもらった。
ワイト島の発着場のほうが広く、待合室も新しい。ホーバーフェリー土産みたいなものもある。フェリーのポストカード(実家に送ろうと思う)と冷蔵庫にくっつけるマグネットを買った。後で気が付いたが我が家の冷蔵庫はマグネットがつかないタイプだった。マグネットつかない冷蔵庫とかあるのかよイギリス。
外にいると地元には特別であってほしいという思いが芽生えるらしい。なんて無責任なんだろう。それはそうと大分には世界最強の温泉都市別府があるのだからもっと頑張ってアピールしてほしい。そのためには「そこにしかないもの」が必要だ。
次に帰国する頃には大分ホーバーフェリーが復活しているはずなので無駄に2往復ぐらい乗ってやろうと思っている。