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【図書紹介】トルコ語(大阪大学外国語学部)・私がトルコ専攻で学んだときのことをふりかえりつつ

2021年の四月に大阪大学外国語学部からトルコ語の教材が出版されましたね。ツイッターでもそこそこ話題になったと思います。

何を隠そう、私も阪大外国語学部のトルコ専攻出身で、テュルク世界への入り口はトルコ語でした。私が学部でトルコ語を教えてもらった時はHitit(ヒッタイトの意)というアンカラ大学が出している教材と「トルコ語文法読本」を主に使っていました(余談ですが、トルコ語の教材なのにタイトルがヒッタイトとはセンスがないとは思いませんか)。「トルコ語文法読本」は文法用語に慣れていない人は使いづらい面もあるかもしれませんが、解説、練習、講読のバランスが良く設計されていて私が生まれる前の1986年の出版ですが今でも色褪せていない学習書だと思っています。現に私も基本的な文法の全てをこの本から学んだと言っても過言ではありません。著者の勝田先生はトルコの事を本当に愛しておられて、当時のトルコ専攻では唯一楽しそうにトルコでの経験や思い出を語りながら文法を教えてくださいました。

それから時は経ち、世間のトルコ自体の認知度も上がり、トルコ語の教材や書籍も様々な出版社、著者の方から出版されてきました。そんな中、トルコ語をしっかり学べる久々の語学書がこの大阪大学外国語大学の教材です。私の専門は言語学ですが、「やはり餅は餅屋で、言語学者が書いた文法教材が一番」だとは思いません。もちろん研究の最前線を盛り込んだ教材や参照文法などは言語学者の仕事だと思いますが、それらをさらにかみ砕いて落とし込んだ教材であれば著者が言語学者である必要はないと思います(仕事を取らないで―とは心の奥で思いますが 笑)。

以下に、私がこの語学書を良いと思った点を挙げてみます。

1.例文、練習問題がとにかく豊富。例文も実践的
文法を学ぶのは世の中に存在する文に限りがなく、すべてを暗記することが不可能だからだと思っています。しかし逆に考えると、ある程度の文は暗記したほうが文法を学ぶのにも役に立つということは言うまでもありません。練習問題も含めるとこの教科書にはたくさんの例文が掲載されており、私がこれまでに見た日本の教材の中ではおそらく一番の分量だと思われます。

2.様々なトルコ関係の専門家によるコラムと推薦図書が掲載
トルコ語を学ぶのは言語学を専門にしている人間ばかりではありません。むしろ、トルコ語学ぶ多くの学生が言語学以外のことを専門にしています。著者の先生を始め、様々なトルコ研究の専門家がコラムを寄稿しています。特に良いと思ったのが、それらの最後に日本語で読める推薦図書が書いてあるところです。この教材を使うであろう阪大外語の1年生はこれから専門的に研究する分野を選ぶ必要があるので、こういうものを参考に読んで自分の関心分野を定めていくことができると思います。

序説の中で著者の先生は「トルコ語はあまり簡単ではありません。」と書かれているのが印象的でした。多くの教材には読者のやる気を出させるため、基本的な文法構造を念頭に入れて「トルコ語は日本語に似ています。」「簡単です。」等と書かれていますが(もちろんあるレベルでは同意できますが)、この教材では語彙の習得を念頭に入れて日本人には馴染みがないと言う意味であまり簡単ではないと述べてあります。語学と長く付き合っていると最終的に行きつくのは語彙の習得で、いつになっても知らない語彙がなくならないというのは経験から理解されている方も多いと思いますので、納得できますね。

この春の挑戦としてトルコ語に挑戦されるのはいかがでしょうか。


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