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ワンタンメン,松桐坊主,長電話 【単色日誌 250113】

どうしてそんな話になったか今ではすっかり忘れたが、その時の僕は大げさなジェスチャーと弁舌でもって自分が食べたワンタンメンの美味さを相手に伝えようと躍起になっていた。撮影現場で御一緒したヘアメイクさんに写真まで振りかざし僕はひとしきり力説していた。それが昨年の秋。

昨日、そのヘアメイクさんと久々に御一緒した。彼女は僕が薦めたラーメン屋に三回行ったらしい。それを聞いて嬉しくなると同時に別の友達のことを思い出した。

他愛もない話をしている最中、出張で名古屋に行くと言った僕にその友達は名古屋ならあそこだねとある店の名前を教えてくれた。僕は結構なひねくれ者なのだが一度認めた相手のことは愚直に信用する柴犬じみたところがあるので彼女が薦めるならばとその店に赴いた。とても居心地の良い居酒屋でその後も名古屋に行く度必ず飲みに行く。

例の店気に入ったよと友達に伝えたら彼女の返事は「行ってくれてありがとう」だった。こっちが良い店教わったのに何で君が礼するの?とその時は不思議だったが、相手がこちらの言を信じて費やした時間への敬意だと理解した。三回ワンタンメン食べに行ったヘアメイクさんのおかげで実感出来た。三回は行き過ぎだとも思った。

ワンタンメンの話をしてるうちに現場が終わった。仕事中にLINEが二通入っていた。ひとつは明日早朝の撮影が午後からに変更になったという連絡、もう一通は現在執筆中の小説の第三章を送ったという友達からの報告。

帰宅すると長男は ニンテンドーSwitch に忙しそうだったので次男を別の任天堂に誘った。

初めて花札を目にする次男にルールを説明しながら花合わせをした。「この札に書いてある『任天堂』ってSwitchのニンテンドーと一緒なんだよ」と次男に伝えると彼は素直に驚き感心した上で松桐坊主を決めて勝利した。次男は札を触りながら「綺麗な絵だね」と言った。


夜、友達の小説に目を通しLINEでやりとり。途中で指が痛くなったので電話に切り替えた。僕は物書きでは無いのでアドバイスなど出来ないし感想を伝えるだけなのだが、それですら難しい。「結局、最後まで読まないと分からないよね」と当たり前のことを伝えた。

当たり前のことを伝えて電話を切り、この日記の名古屋飯のくだりを書いていた深夜三時に当の名古屋飯の友達から「マスダが起きてる波長を受信した」とLINEが来て横転しそうになった。そこまで念をこめて書いていたわけでは無いのだが。名古屋飯とも電話をしてこの日は友達二人と二時間以上話をした。世間は連休の中日なのだなと思った。

昼前に起きて新成人を撮影した。毎年この日に彼ら彼女らを撮影すると、自然は若者を磨き照らすことにしか興味が無いのではないかという思いに駆られる。単純な話、ただの嫉妬なのだが、その嫉みを自覚してからの方が僕の新成人写真は確実に自由になった。

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マスダヒロシ
インスタ( @masudahiroshi )やってます。ツイッター( @Masuda_h )もやってます。どうぞよしなに。