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散髪,戒め,阿修羅のごとく 【単色日誌 250111】
髪を切りにいく道すがらに必ず通る遊歩道で、等間隔に八基ほど設置してあるベンチのちょうど真ん中あたり、四基目の下に猫が五匹丸まり寄り添って暖を取っていた。写真を撮ろうかとも思ったのだが、なにしろ猫が寄り添う程の寒さで手指がかじかんでいたし、少しでも早く屋内に入りたかったので、猫よりも静かにベンチの前を通り過ぎ、そこからもう十分ほど歩いて目的の美容室に入った。
その店はカット&セット1,200円、回数券を買うと一回あたり1,000円という破格値にも関わらず接客も施術も丁寧なので、安いなら安いなりのサービスしなきゃバランス取れないでしょうに、1,000円でこのレベルの仕事されちゃ同業者はたまらんよな、とか思いながらも僕は同業者では無いので素直に安さにつられ二年ほど通っている。
システム上、美容師の指名や予約は出来ない。毎回異なる美容師に同じリクエストを出す。「横も後ろも5ミリくらいまで切ってください、あぁ全然バリカンでいいです、上は少し遊べるくらいには残してください、でも前髪とか無くても坊主みたいになっても別に気にしませんので遠慮なく切ってください(笑)」
毎回、同じである。最後の「(笑)」まで同じなのだが出来上がりは毎回違うから面白い。今日はかなり理想に近い髪型に仕上がった。店を出た後もガラス窓に映る自分の頭部を見てにやつく程には満足した。前述通りのシステムなので次回もまた同じようになるとは限らない分、今日のこの髪型が嬉しい。
帰路、新しい髪型に浮かれたついでに猫を撮ることにした。カメラを用意し、例のベンチを見たが猫はいなかった。等間隔に並ぶ他のベンチも覗いたが一匹もいない。件の美容室に二年通い、二年この道を通ってきたが、猫が五匹寄り添っている光景は初めてだった。二十年以上この仕事をしてきて、写真は撮るべき時に撮らなければいけないと身に染みてるはずなのに結局こうして撮り逃す。
今夜は部屋でひたすら CaptureOne なので、作業の傍ら、ネトフリに来てた『阿修羅がごとく』を見るつもり。
そうなると気になるのはあの曲だ。トルコ軍歌 "CEDDİN DEDEN"
僕にとって『阿修羅のごとく』と言えばこれである。もっとも、この曲が使われていたのはNHKドラマ版なので今回のネトフリ版で使う必要は無いし、是枝監督がわざわざ引用するとも思えないけど、使う使わないでは無くて "CEDDİN DEDEN" が似合う作品かどうかが重要なのである。予告編を見る限りでは、演者もルックもトルコ軍歌が似合いそうな風合いなので楽しみだ。
夕飯は、塩胡椒で焼いた豚肉、ゆで卵と人参のサラダ、大根と油揚げの味噌汁、えのきの煮つけ、きくらげの佃煮、そしてオムレツ。明日の撮影は午後から。
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