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清潔の先にある世界とは

私は20年近く前、結核の疑いで隔離入院したことがある。
痰を培養して結核菌かどうか調べる、という検査入院で、結果的には肺炎だったが、抵抗力が落ちていたことに変わりはない。
その際に病院の人と話していて、「若い人で結核になる人が多いが、栄養バランスや睡眠不足というより、清潔な環境で育っているから雑菌に対する抵抗力がそもそも弱い」という話を今でもよく覚えている。
とはいえ、私は医者でも専門家でもないから実際のところはわからない。つまり人間にとって現代の生活が清潔すぎるのかどうかはわからない。

新型コロナウィルスの登場前にも、他の感染症ウィルスや大腸菌などの殺菌のため人間は一定の除菌をおこなってきた。
コロナ以後は、さらにそれを進めて徹底的な殺菌除菌を進めた。
個人的には、外出時にマスクは外せないし、他人の飛沫は絶対に避けたいと思うようになった。家に戻ればすぐにマスクを処分して、家族でさえ外出から戻ったら「菌を持ち込むのではないか」と不安になってきた。マスクを外してもいいと言われても、気が付いたらもう外すのが怖くなっている。
コロナというより、他人の菌そのものが不快になってきている。
子どもと公園に行っても、べたべた触っている遊具には他人の菌が付きまくっているのではないか、といったことばかりが気になる。公衆トイレなどは恐ろしくて入れなくなった。
トイレだけではない。
電車でもエレベーターでも、とにかく接触する恐怖が反射的に出てしまう。
なるべく非接触になるように、と色んなところで進んではいるものの、とても追いつかない。
しまいには外出自体を極力しないように、という方向へいく。これは政府自治体の要請ではなく自発的にそうなっていく。
外食は特にできなくなってしまった。ちょうど回転寿司の問題が騒がれているが、もはや回転寿司だけではなく、言い出したら飲食店すべてが信用できなくなる。

コロナがもたらしたものは、単なる感染症や重症化や後遺症や経済的損失といった直接的な影響だけでなく、「清潔」に対するスタンスにも及んでいて、長期的に見ればそっちこそが人間にとっては大きい影響かもしれない。
本当に怖いのは、あらゆるウイルスや菌に対する人間のリアクションなのかもしれない。
今までも充分「スーパー清潔環境」だったのが、「ハイパー清潔環境」へ移行し、その環境で育った世代は、いったいどんな人体的影響を受けるだろうか。


#清潔のマイルール

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