ゾンビ街のミイラなアイツ
アイツは最高。しわくちゃミイラでも、乳首とへそが横に並んでも、俺はアイツを毎晩抱く。
俺がゾンビ街に転がり込んだのは偶然だった。貨物電鉄に乗り込み追っ手を巻いて、グースカ眠っていたら、電鉄の乗員に叩き出された。そのまま線路を辿った先が、ゾンビ街だった。
ゾンビ街ってのは正式な名前じゃねえ。立派な名前があるだろうが、磁鉄鉱山と電鉄が閉鎖になれば街としては死んでいるし、役場をヤバい連中に乗っ取られればゾンビと同じだ。だが、死体だろうがゾンビだろうが、ハエにとっては腐肉に違いはない。その時の俺は街がゾンビか死体かの区別もつかないまま、ようやく見つけた人里に入るや、真っ先に酒場に向かった。そして偉大なる現金様を取り出し、酒を注文した。酒場の主人は廃電鉄を辿ってきた俺に顔はしかめたが、医者を呼ぶほど優しくもない代わりに、そのまま叩き出すほどの商売心に欠けているわけでもなかったらしい。現金様が姿を消し、カウンターの上に汗をかいたジョッキが現れた。
乾いた体をビールで潤し、魂のガソリンをたっぷり注ぎ込む。気力は十分。ただ、足元が揺れるだけだ。
「大丈夫か、爺さん」
俺の様子に酒場の主人が二人で、心配そうに声を掛ける。心配性の双子が出るなら、最初から酒など出すな。
「大丈夫さ、老けて見えるがお前さん方よりしっかりしてる」
俺は主人を一人ずつ指さしながらそう言い聞かせた。すると二人とも、全く同じタイミングで肩をすくめた。
「仕方ない…おい、アン!この爺様を部屋で休ませろ」
「はあい」
主人の声に、店の奥から双子の女が姿を現す。俺は女に目を向け、双子ではなく一人であることに気が付いた。そこにいたのは、目の覚めるような美人で、頭ほどの大きさのオッパイが二つ胸元に並んでいた。
「お爺ちゃん、立てる?」
「ああ、ビンビンさ」
前の街で別れたギャングの愛人は、俺の頭から消えた。男はいくつになってもオッパイに弱い。
【続く】