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「幽囚の心得」 第5章 「非日常性」に身を置く(1)
歴史を繙くに、時代の変革期にあってその任を担ったのは、常に「非日常性」の中に生きる者たちであった。「日常性」の中に浸かった凡俗が時代を揺り動かし、新たな「日常」を創出した歴史は皆無である。「日常」の連綿とした時間的流動の先に新たなる「日常」は現出し得ない。新たな「日常」の創出のためには「非日常性」の要素の介在が必須なのである。
しかし、世人の多くはこの苛烈なる事実を自明のことにも拘らず、これを認識せず、あるいは多少はそうと気付きつつも臆する故かその事実を敢えて等閑視し、それでいてなお望む将来の劇的な変化の訪れを夢想する。何と自儘なことであろうか。残念なことではあるも、望む華やかな未来はそのままではほぼ招来しない。
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