アイディー 考察、感想
るぅとくんのEPアルバム、「僕は雨に濡れた」の中の1曲、アイディーについて軽い考察と感想を書きたいと思います。奥が深い中毒性の塊の曲!!!
初めて聞いた時、歌詞を見ずに聞いたのですが、その時は艶っぽさと中毒性に純粋に好きになりました。でも、歌詞を見たらイメージがガラッと変わって…残酷さと悲痛さに背筋が凍りました。そして言葉の選び方が綺麗。やはりるぅとくんは天才だ…。
私の解釈を簡単にまとめると、何も知らなかった純真な少女が、中絶薬を飲むまでにいたり、心も身体も壊れていく…といった感じです。
まず、題名のアイディーは、歌詞の文脈からは自分をさしているように思います。ID、つまり自分を識別する材料として使われているのではないかと。
IDには他にも意味があるようで、ID(知能計画)、生物の誕生を司る設計者、というキリスト教の考えだそう。これも掛けているのかも。
アイディー、ギブミー、ウォーアイニー等のカタカナ、童話の話も出てくるから、外国の話ではないかとも考えています。中絶薬だとすれば日本では違法だから…。こんな世界観がどうすれば出てくるでんですか…??どうなってるの私の推し。脱帽。
人形(オトメ)の表現が好きすぎる。乙女を何も知らない無垢さから誰かに操られるような人形のような存在だと言っているのかな。操られたままで、知らないままでい続けたかったのか……「生きたかったのに」のダークな感じ、低いけど低すぎない声が余韻を作って素敵。
一人称が、アイディーを除けば"私"、アタシと2つ出てきているんですが、私、は見せかけの自分、アタシが本当の自分なのではと。そう読むと本当に深い…皆"私"しか見ていないんですよ…
「そりゃアタシもそうか」の所、そこは"アタシ"なのか…そうか…辛い。「下衆な本性 ズル剥けてる」って露骨な表現で貶したあとのこの言葉ですよ…もう辛い。
「画面は正直 ギブミーインスタント救済 螺旋へとぬるりぬるり」はどんどん人間(DNA)が成長している様が恐怖とともにきている感じ…責任なんて負いたくないよね…簡単に逃げる方法が欲しいよね…つら。
「幸せなのに? 」がほんとに好き…絶対幸せじゃないのに。幸せな"はず"だよね、っていう自嘲かな?オトメでいられたんだよ?子供が出来たんだよ?って……。「伝う雫」の沈んだ感じも…。
「秒 嵩む数字を」は中絶できるまでのタイムリミット?この瞬間も成長し続けていく。「背徳の華に縒る」背徳の華を自分の子、と考えると、縒るはDNAが絡む様子か…。「もう戻れない」でもう覚悟を決めたのか…それとも期限が来てしまったのか…。ここの少し音をきって重めに言うところが好き。
この後の色んな童話に例える所、あまりに的確で圧巻。童話に例えることで何も知らない少女、つまりオトメの悲劇を表してるのかなって。「ガラスの靴のように思えたの」からの抑えた寂しそうな声がもう悲痛で…。
「手に取ったのは毒林檎で」、悩んだのですが、私は中絶薬と解釈しました。(その前の出来事を指しているかもですが…)
「指から腐り落ちていく」比喩でもあるけど、子供が…(これ以上言いたくない)
「幸せだけ 手のひら零れ落ちていく」幸せだけ、が優しい声で切なくなる…。胸がギュッて…。
「アイディー?」
…もう"自分"というものを失ってしまった…。「(身体も心も)ぐしゃぐしゃになった」「私の名前さえももう分からない」
中絶薬って、身体に大きな負担をかけるんですよね、壊れてしまったんだろう。心も一緒に。
最後の湿った水のような音…私には何を示しているか分からないけどきっと…。そこがすごく好き。
こんな重い話を綺麗な言葉で、お洒落なメロディーに乗せて作品を作り上げてしまうるぅとくんに脱帽。そしてこれを歌い上げてしまうんだからほんとに……。
音楽は詳しくないのですが、綺麗な音の楽器がお洒落に盛り上げていて素敵。メロディーもずっと上がったり下がったりするけれど上がりきったり下がりきったりしないどっちつかずな感じがこの曲にすごくあってて好き。
凄く中毒性のあるメロディーで人を魅せてしまう力があって…私も歌詞を見ずに聞いた時から、単純に魅せられてしまったんです……
甘い声と儚い声が更に惹き付けて仕舞うんですよ。
世界観の表現が作詞、作曲、歌、MIX全てにおいて完成されすぎていて…過去のハードルを簡単に越えてくるからこのお方は…最高です。
素敵な曲をありがとうございます。