桜色のなにか
あらゆる「桜の香り」をうたう商品が出ていて 桜はそんな香りだっけな、と思う。
春が一番昔にあたる季節だから忘れてしまっているんだろうか。
イチゴ味のポッキーはいちごとは違うイチゴ味なように、桜の香りは私の知ってる桜とは別のことを言ってるんだろうか。そんなに香る桜に1度も出会ったことがない。
だいたいピンク色の偽物は嘘をつくばかりか本物より主張してくるから怖い。
もっと怖いのはピンク色が好きな女性だ。
ピンク色が好きな女性はだまされているのをわかってだまされるのが好きな人が多い気がする。
ミッキーの中には人がいるし、ディズニーランドは埋め立て地だが、誰もそんなことは口に出さないし喜んでだまされている。
ピンク色を好きな女性はその筆頭にいて、ミッキーの中の人についてなにか言うと取り締まるんじゃないかと恐ろしい。
以前、知人にピンク色がとても好きな女性がいて、その人が憧れている男性がとんでもないろくでなしだったんだけど、いくらそいつはやばいとみんなに言われても、その人はかたくなに「ほんとは優しい人だから」と言って聞かず、だまされてボロボロになっても、自分がふがいないからその人に嘘をつかせてしまっていたんだとばかり言った。
最初はかわいそうだと慰めていた友人たちも、あまりにかたくなな上、慰めると相手の男性をわるくいわないで!と怒られるもので、そっと離れていった。
どんどん人が離れる中で「それでもその人がすき」と、彼女は奇妙な光をおびはじめた。
彼女はもはや、その男が好きなのではなく、そんな男をそれでも悪く言わない自分が好きなのだろうな、という感じになってきたので、距離を置いてそっと覗き見ていると、彼女の奇妙な光に吸い寄せられるようにやばそうな人たちが集まってきて蛾のように群れをなすようになった。
そして誰かが彼女を心配すると、蛾どもが「かわいいからひがんでいるんだ」と言い出すもんで、もう近づくこともできないと思っていたら蛾の1人とつきあいだして、半年もせず、その蛾がいかにろくでなしで乱暴でひどいかを嘆いている姿を見かけた。
ろくでなしで乱暴でひどい扱いをうければうけるほど、より彼女は輝きを放ち、あらたな蛾を吸い寄せている。
こういう人に対して私はできることはなにもないからそっと距離を置くことにしている。
子どもの頃に、同じくピンクが好きな女の子がいて、その子はいつも男の子と一緒に戦隊ものごっこをしていた。
私も混ざって遊んでいたんだけど、いつも彼女がピンクで私がイエローの役だった。
ある日その子がジャングルジムにつかまって「敵につかまってしまったわ!助けて!」と言ったから助けに行ったら、小声で「イエローじゃなくて、レッドにたすけてほしいの!むこういって!」と言われてしまった。
レッド役をやっている男の子に助けてもらいたいからむこうにいけ、というわけだ。
私は子どもごころにものすごくショックで、それ以来女の子のたすけて!は難しいぞ、と思うようになった。
今でも、女性に「たすけて」と言われたときによくそういう気持ちになって困ってしまう。
そのたすけて、は私に助けて欲しいですか?それとも誰か別の人ですか?
桜の香りのシャンプーは私の知ってる桜の香りではないし、イチゴ味のポッキーは私の知ってる苺の味ではない。
ピンク色の彼女たちが「たすけて」と言ってるとき、私の知ってる「たすけて」かもしれないし、違うかもしれないので真偽を確かめたいからなんかいろいろ尋ねてみたりもするが、それはそれで意地悪をしているように見えるらしく、たいていそういう人には嫌われてしまいがちだ。
こちらも苦手なのでそういう人には嫌われても一向にかまわないのだけれど、オオカミ少年みたいに、ほんとのたすけて!だったのに私がスルーして今ごろ食べられたり殺されたりしてないだろうかと心がひやひやチクチクしてしまう。
イチゴ味や桜の香りの商品をみると、そういう女性たちを思い出して、「絶対だまされないぞ」という気になる。
もうすぐ実際に春になったらたぶん忘れることだから、時々こうやって思い出して書いておく。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?