ボブ・ディラン「ローリング・サンダー・レビュー」
ボブ・ディランを何か一枚というのはとても困る。活動歴が長い上に、その時期その時期でやってる事も異なるし、いいアルバムと言っても曲単位ではつまんない曲とか平気で入ってるし。
ぼくは高校生の時に「追憶のハイウェイ61」を聴いたんだけど、ぜんぜんピンと来なかった。当時聴いていたローリング・ストーンズとかレッド・ツェッペリンなんかの方がわかりやすくてカッコよかった。
それが、20歳を過ぎてからボブ・ディランにどっぷりハマった。きっと、少しばかり音楽がわかるようになったんだと思う。
1975年、ボブ・ディラン34歳。当時のツアー「ローリング・サンダー・レビュー」を記録した、ブートレッグシリーズのひとつ。最高のライブ盤です。
ボブ・ディランに興味を持って何枚かアルバムを聴いてみたら、、、きっと「追憶のハイウェイ61」とか「ブロンド・オン・ブロンド」、「血の轍」、「オー・マーシー」あたりを聴いてみたその次くらいにこのアルバムを聴いてみるといいと思います。
この人は、つまんないアルバムやつまんない曲も平気で出すんだけど、本気出した時はヤバい。このアルバム、脂の乗った本気のボブがいます。
なんと言っても一曲目です。「Tonight I’ll Be Staying Here With You」。なんとも恥ずかしいタイトルです。アルバム「ナッシュビル・スカイライン」というとっても地味なアルバムに入っている、実際地味な曲です。少なくともこのアルバムに収録された時点では、ほとんど無視されるような哀しい運命の曲だったわけです。
ところがどっこい、アレンジをガラッと変え、ドタバタしたバンドの演奏。そこにボブ・ディランのヴォーカル。適度にしゃがれた最高の状態です。「ソマッ、チケロザウィア〜」。正しくは「Throw My Ticket Out The Window、、、」だそうですが、この際歌詞はどうでもいいです。この歌い出し、このテンション、鳥肌ものです。もうこのワンフレーズで勝負ありです。持って行かれます。
曲が、バンドやアレンジでこうまで変わるのかと、ボブ・ディランは教えてくれます。
一曲目で掴まれたら、あとはただ流れに身を任せるだけです。
あぁ、CDを2枚目に取り替えるのが面倒くさい。そのくらいずっと聴いていたい。
貴重なのは「ハリケーン」のライブバージョンでしょうか。スタジオでも一発録りなので、アレンジに大きな変化はないですが、スタジオ版よりもさらに凶暴です。聴衆を前にすると、ボブ・ディラン凶暴なり、です。
最近、このツアーのボックスセット14枚組が出たらしいです。知りませんでした。まぁ、マニア向けですね。とりあえずこの2枚組をとことん堪能しましょう。
ボブ・ディランにハマるとそこは深いです。ロックがなんたるかを教えてくれます。なんとも取っ付きにくい人ではありますが、一生楽しめます。他のアルバムについても、また書きたいと思います。