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JUNK FILM by TOEIを楽しく観る方法vol:03「徳川女刑罰史」(ネタバレあり)

AVの世界など、昔では考えられないような美人やアイドルのような人がシレッとデビューしていたりVRなどハードの進化もあって、ヤクザの兄さんが売ってた怪しいブルーフィルムの時代からはものすごく進化をしています。

しかし、本作品はありとらゆるエロ情報が氾濫している~なんて書くとまるですべてのエロメディアをチェックしまくっているみたいでイヤですが、そんな現代の目から見ても十分「エゲツない!」とゲップが出るような傑作なのです。1968年石井輝男監督。「不良番長」の1作目が併映だったんですね。って、既に半世紀前の作品だとは!時代劇というのもありますが、その古びていない賞味期限の無限さに改めて驚く・・・。

お話は3つのストーリーのオムニバス構成。「実の兄と妹の禁断の恋・・・は許される筈もなく拷問」「尼僧と僧侶の禁断の恋(に、尼さん同士の同性愛的な嫉妬も絡んで)・・・で、拷問」「責め絵を女体に掘ることが生きがいの江戸一番の彫師と第一話・二話にも出ていた拷問好きな役人が意気投合してずーっと拷問」という「結局、拷問かよ!」というツッコミに対する反論のできなさよ。

一話目のイラストにも描かせてもらった橘ますみさんがけなげさと悲惨な境遇で一層輝く個性が素晴らしい!昔の映画を観てると「なんでこの人はもっと大成しなかったんだろう」と疑問を覚える事がありますが、彼女の場合はこんな変態的な映画への出演が続いて業界がイヤになってしまったのかも、と妄想。石井輝男監督ッ、許せん!・・・いやこんな傑作群を生み出し続けてくれたので感謝しかないです。

でも、当時の東映京都撮影所では石井輝男監督排斥運動も起きたとか・・・やはり日本も70年代初頭までは理想を理想として語る事が重んじられていた。しかし、この後ドンドンエゲツなくなってって・・・自分的にはその捨て鉢な気分で作られた映画もすごく好みなのですが、自分と自分が置かれた状況を俯瞰してみるには、やはり昔の映画を観るという行為はとても重要だと思います。

話を作品に戻すと、この禁断の恋というある種ベタな設定が、おどろおどろしい拷問シーンの毒消しになっていて感心します。最近のマンガとかも全員登場人物が性格悪くて残酷な事をして救いもなんもないんだろうな、というのが多そうですが(タイトルと絵柄での想像なので)、やはり「愛する者のために拷問を受ける」っていうシンプルで感情移入できる要素が有るのと無いのとでは大違い。この「愛」という一服の清涼剤、しかし定番であるがゆえのクサみを消すような拷問シーン・・・愛と拷問という「聖」と「性」がそのまま交錯するこの作劇術に改めて敬礼。

そして異質な第三話。小池朝雄さん演ずる「江戸一番の彫り物師」彫長と、残虐な刑罰を与えることがライフワークになっている酷吏、渡辺文雄さん!このアクの強い2人の粘っこい絡みが、前二話を凌ぐある意味無目的な拷問にストーリーを引っ張っていきます。

しかし、小池朝雄さん演ずる彫長。始終女体の事を考えてますがそれも全ては己の納得する(渡辺文雄さんに出来栄えを鼻で笑われるシーンが最高)彫り物を彫るためというストイックな変態。殆ど強姦のように理想の肌の女性を拉致するんですが、なぜか女性が彫長に惚れてしまうというあまりにもな展開で放ったセリフ。

「すまねえ・・・ま、きちがい犬にでも噛まれたと思って堪忍してくんねえ」!

自分が常軌を逸してることを自覚してるってのが何とも。じゃあやめろよ!って言いたくもなりますが、彫り物を極めるためには・・・その姿勢は批評家、世論、撮影所のスタッフという全方位的な非難轟々の中、淡々と狂った傑作を生みだしていた石井輝男監督自身の姿にも重なる気がします。

「刑罰に事寄せて、人を苦しめることに楽しみを見つけたような男、南原(渡辺文雄さん)。その彼も自ら苦しみつつ火に包まれて死んでいった。だが彼をそうさせてしまったのは刑罰のあり方そのものではないだろうか。人を裁くという資格のある人間がこの世にいるだろうか。」

ラスト、良心的な与力を演じていた吉田輝夫さんがエゲツない拷問シーンの贖罪としてか、とってつけた風にこう呟きます。確かに正論ですが、かといって吉田さんが劇中で真剣に渡辺文雄さんの暴走を止めていた訳でもなく。生粋のサディスト達が暴走するのには何の役にも立たない。まるで「アンタ達の非難なんてクソの役にも立ちはしないのさ」なんて石井輝男監督が笑っているようにも思えてくるのであります。怖いお人や・・・。

ちなみに本作品は1968年の興行収入ベスト10ランキングに堂々登場。そして、小池朝雄さんの彫師に感じ入るものがあったのか、本作の発展形とも言える「徳川いれずみ師 責め地獄」にまっすぐに突き進んでゆくのでありました。

どうでもいいけど、徳川家の人はいい迷惑だよね・・・。



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