「薄氷の殺人」
2014 監督・脚本:ディアオ・イーナン
畏友、ムーニーマンの記事で気になったこの映画。見事に寒そうな大陸の風景が広がっています。冒頭、落ちぶれた警官のアル中的な仕事風景のセクハラ100%な振る舞いで、どういう主人公なのかハッキリと理解できました。
それにしてもこの映画、正に掃き溜めに鶴状態なヒロインを除いては変なおっさんばかりが出てきます・・・。ヒロインの元夫は多少イケメンでしたが、ヒロインのグイ・ルンメイさんも同性受けする感じでも全くないし、結構観る人を選ぶかもしんないです。・・・が、雪景色の中でつまんない日常業務(変態上司つき)と酒臭いおっさんに絡まれるという不幸せな状況のグイさんの暗さが良い!
映画のテイストは殺人事件を追うサスペンス、というか90年代の古き良き欧州の映画を思い出させる良い感じに時間の流れが希釈されて、「物語そのもの」より「その場所の雰囲気」を味わうつくり。しかし、その中に80~90年代の香港映画を思わせる銃撃シーンやスケート用具での残酷シーンなどが不意に入ってきて、良い感じの違和感も楽しめます。
そして、関係者の経営してるアパートにいきなり馬が置き去りにされて・・・って、これ思わぬところでロケ先の住民から「いやー、良い馬がいるんだけど使う?」って薦められてそのまま採用したんじゃねーか?っていうアバウトなノリとか、なんかパワフルな中国の勢いを感じられるシーンも多々あります。その究極がラスト近くのソーシャルダンスのレッスン場(違うかな?)でリャオ・ファンがヤケクソ気味に踊ってるシーン。妙に長いし、ディアオ監督に「オメー、カットかかるまで適当に踊っとけよ!」なんて嫌がらせ的に命じられたのかな、なんて邪推してしまいます。
と、見どころは多いですがベルリン映画祭二冠達成!とか言われるとちょっと首をひねりたく・・・ですが、よく考えたらベルリン映画祭の受賞作品なんてマトモに観た事ないのでした。。。そんな高名な映画祭で受賞はできずともすばらしい映画はいっぱいある!というのも当noteの主張ですので次回は原点に立ち返って東映映画をとりあげます。