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8歳のカメラレンズ。

「ずがーん!
「どっごーん!
「ぷしゅーーーー!

教室のすみっこで、とある劇がなされていた。

それを監督しているのは小学生8歳のおとこの子だった。

*****


仕事をやめて暇な毎日を過ごしていると、「暇ならすこし手伝ってくれない?」と声をかけられた。

ひょんなことから、放課後児童クラブへ入ることになった。

ただ、こどもがあまり好きではなかったため断ろうとしたが、施設の管理業務で子供と接点はほとんどないからということで了承した。

報酬は少なかったが、まぁ何もしないよりはマシかと思い引き受けることにした。


うるさい音が苦手な私には地獄だった。

ドタバタ走る足音、一体どこから出ているかわからない大きな声。
思わず「きっつ…」とぼやいてしまった。


そんな中、みんなから離れて、和室でひとり遊んでいるおとこの子がいた。

彼をまさお君(仮名)とする。


まさお君はレゴブロックで遊んでいた。

「ずがーん!

「どっごーん!

「ぷしゅーーーー!

彼からしばらく目を離せなくなってしまった。

それはひとりあそびしていた昔の自分と重なったからかもしれない。
それは自分の世界観の中で生ききっている喜びを感じたからかもしれない。
そして何よりも彼の劇が私にも見えたからかもしれない。

レゴブロックでつくられたウルトラマンのような人形や、ドラゴンのような模型。

彼の目を通したその映像では、本当に人形は動いているし、ビームを出しているし、空を飛んでいるのだ。
ドラゴンは火を吐くし、バサバサと大きな翼を羽ばたかせている。
机の上は廃墟で、ドラゴンによって建物は壊されている。
私もその光景が見えるし、とてもワクワクした。


しばらくすると、

「まさおくん、そろそろお母さん迎えにくるから片付けよっか。

とスタッフさんがまさおくんに伝えた。

「ずぎゃーーん!どこーん!
まさおくんの創造力はとまらない。

「まさおくん、ほら片付けよ。

「えー・・・だってまだ(お母さん)きてないじゃん。

「すぐ来るから、ね、片付けよ。

「・・・」
カチャカチャ…とまたレゴブロックをいじり始めた。

「はやく片付けないと、おばさん明日そのブロック壊しちゃうからね

あー。
これだ。
「○○しないと」「○○してから」といった脅しや条件付け。私はこの躾の仕方にすごく敏感なのだ。

なぜなら、結婚しないと、仕事をしないと、お金がないと、仲良くしないと、これらの現代の生きづらさの原因は、きっとこの脅しと条件づけの躾から来ているのではないかと考えているからだ。

「わかったょ…。
しぶしぶまさおくんは片付け始めた。

「よーし、えらいねー。
スタッフさんがまさおくんを褒める。

このとき、キューっと胸が締めつけられた。
自分のやりたい気持ちを抑えて、誰かの言った通りにする。
それで褒められるってやっぱりおかしい。

もっとやりとりがあっていいはずだ。

「じゃあお母さんがきたら、すぐ片付けるって約束ね」とか、
どうしても今すぐ片付けてほしかったら、
「お願い、片付けてほしいんだ。片付けてくれると嬉しいな」とか、

お互いの意見のすり合わせが必要だと思う。
もちろん、こどもには難しいから大人が提案しないといけない。
でないと自分か相手かの二者択一思考になってしまう。
他人が自分の考えに〇か×かでしか判断しないとしたら、他人が〇という意見しか持ってはいけないと考えてしまう。

そうじゃなくて、最終的な意見は違っていても、そこに自分の意見が考慮されているという体験をしておかないと、白黒思考や完璧主義の呪いはいつまでたっても減らないんじゃないかって思っている。


まさお君の創造力はとても興味深った
だけど多くの大人たちは、みんなで仲良くワイワイ遊ぶ子たちを健全だと感じるだろう。まさお君がひとりあそびではなく、みんなと遊べるよう強制させる教育が待っていることを考えると悲しくなる。

彼がもう少し大きくなって、真の協調性が認められる社会になってくれたらと願っている。

***

まさお君のお父さん、お母さん。

まさお君は素晴らしい才能を持っています。
私は彼のファンになりました。

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