心理学研究法メモ
実験的研究の構造
独立変数:原因であると推定される変数
従属変数:結果であると推定される変数
余剰変数:独立変数以外で従属に影響すると推定される変数
実験者は独立変数を操作して従属変数を測定、二つの間の因果関係を測る。これを推定するためには他の因果関係は排除しなければいけないので、余剰変数を取り除くか、値が変わらないように一定に保ち、独立変数と一緒に変化しないように統制する。
第3章
変数の抽象性
仮説を構成する変数は抽象的な観念であり、それをどうやって操作、測定、統制するか?
例
暴力番組を見ると、自分でも暴力を振るうようになる という仮定 の 暴力をふるう という変数
暴力をふるう = 他人を蹴る = ビニール人形を蹴る =ビニールのボールを蹴る ?
暴力をふるう ということは、具体的な行動に思えるが、そうではなく抽象的な観念。
が、現実で実証的な研究を行うためには、具体的な行動を調べる、具体的な材料を提示するなどの具体的な手続きはどうしても必要。
つまり、研究を立案する時、抽象的な観念を具体的な手続きに翻訳することが必要。
補助仮説
研究の結果から仮説の当否について判断を下すとき、「研究で用いた具体的な手続きは、仮説のなかの抽象的な変数に正しく対応している」という前提のこと。
しかし、もちろん抽象的な観念と具体的な手続きは一体一対応してる訳では無いので、前提である補助仮説が間違っている場合もある。
例
光源の明ると見えの明るさの関係を調べる研究
独立変数:光源の明るさは、物理量そのもの。(抽象的でない)つまり、補助仮説が間違ってるかどうかはあまり気にしなくて良い。
一方、研究対象が記憶、思考、社会的認知などの高度な心理プロセスになると補助仮説の問題は重要性が高まる→(変数の抽象度が高いから?)
操作的定義
補助仮説の問題を回避するため、「概念を手続きで定義しよう」という考え。
何かの概念を定義する時、抽象的な観念として、概念的に定義するのではなく、具体的な手続きで定義することによって、変数のを手続きに翻訳する必要が無くなる。→補助仮説の問題を考えなくて済む。
独立変数の種類:
直接的独立変数:特定の物理刺激そのもの
概念的独立変数(諸変数の代表):あるカテゴリーに属する物理的刺激
カテゴリー(概念)と特定の手続きを結びつける補助仮説が必要になる
概念的独立変数(心理変数):物理的刺激によって引き起こされた心理状態
直接観察することはできない心理状態が独立変数
その心理状態という独立変数を操作するために何かしらの具体的手続きをする
一つの心理状態はさまざまな具体的手続きによって生じさせることができる。
純化:一つの手続きをある独立変数の忠実な代表にしていく方法。
一つの独立変数はいくつもの手続きに翻訳されうるし、反対に一つの手続きがいくつもの概念の翻訳になりうることもあり得る。
純化が必要な場合
①手続きそのものが洗練されていない場合:
一つの具体的手続きに意図しなかった夾雑物が紛れ込んだ時、その不純な要素を取り除いて純化を行う方法
②具体的手続きが被験者個人個人に対して多重な意味を持つ場合
多重意味の例:
個体差として処理できる場合-実験計画や統計処理の工夫によって対処?
個体差として処理できない場合はどういう時か:
①大半の被験者に対して異なる意味を与えている時
②一つの手続きが同時に複数の質的に異なる意味を与えている時
例 友人との仲違いが違反行動を増やすという実験
友人との仲違いは、「自尊心の低下」だけで無く「怒り」という心理状態も引き起こすかもしれない。この時、違反行動が増えたとしても理由が自尊心の低下なのか、怒りによる八つ当たりなのか区別がつかなくなる。今回は怒りという不純物は取り除かねばならない。
多重操作
一つの概念的な独立変数を複数の具体的手続きに翻訳すること。
その複数の具体的手続きが同じ結果を出したならば、より因果関係を強く主張できるはず。しかし注意が必要で、それは二重に独立変数の媒介を確認できたからでは無く、同じ結果をもたらすことで二つの手続きの共通していない(不純な)多重意味が結果をもたらしていないことが確認でき、その範囲では主張したい概念の確からしさを主張できる。多重操作は肯定ではなく否定の論理であるので、多重操作の数自体はある概念の十分な確からしさの保証にはならない。
独立変数の効果が最大になるような手続き化
効果が最大になるような操作を行う=『強い』操作を行う
ある独立変数が2つの水準を持つとする。
①2つの水準の差を最大にする
『ネクタイなしスーツ』という水準と『ネクタイありスーツ』という水準の比較よりも
『ジーンズ姿』という水準と『ネクタイありスーツ』という水準の方が『きちんとした姿』という基準の水準間の差が大きい。
②それぞれの水準の中の同質性を最大にする
例:『ピンクのスーツ姿』という水準よりも『グレーのスーツ姿』という水準の方が、みんな『きちんとしている姿だ』と思う(同質性が高い)
ことで2つの水準の間の差が最も明確になる。
強い操作の問題点:インパクトの強さ
強い操作を行う=②の『それぞれの水準内での同質性を高める』=『すべての被験者に対して同一の意味を持つような操作をする』=具体的手続きの具体性を犠牲にして抽象的で一般的なものにする
そうすると、インパクト(被験者一人一人に対して具体的手続きが十分な意味を持つこと)が失われる。
インパクトが弱いことで起こる問題
①人は、刺激がもたらすインパクト(意味)に対して反応している。インパクトが弱くなると人の行動を研究することは達成できない。
②研究の本来の目的以外の方法論的な問題の介入を許してしまうこと。(観察反応)
よって、独立変数の操作の強さとインパクトの強さは相反するので、バランスをとることが大切
手続きの代表化
代表性:1つの具体的手続きがある概念の標準的な代表であるかどうか
概念的な変数を1つの決まりきった手続きで代表させることは困難なことが多い=1つひとつの手続きはある概念の部分的な代表にしかなり得ない(手続きは多重意味を持つことが多い)
手続きの多重意味のため、手続きの実施の際の一定化=概念の水準内での同一性を保証する とは限らない。手続きをある程度柔軟に変更することも求められる。
手続きの一定化を逸脱するときの注意点
①変更された手続きの心理的等価性を直接に保証する客観的方法は無い
②手続きの調整は主観によって行われる
③標準的な手続きからの変更や逸脱を正確に記録してそれらの妥当性を客観的に評価できるようにする
④予め変更や逸脱が予想される場合、その変更や逸脱までも含めて標準化し、②で問題になる主観を排除する
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?