[ 言葉の繊維 ] 5. 道
あまり考えもせず、
航空会社を決めたことで、
焦ったことがある。
映画「糸」のエキストラ出演のため、
初めて糸島へ向かった日。
僕は、成田空港から福岡までの
LCCを予約していた。
そのLCCは空港第3ターミナルにあり、
最寄りの空港第2ビル駅からも距離がある。
その距離600m以上。
徒歩約15分、連絡バスで約5分。
バスもでているほど遠いのだ。
その日駅に着いたのは、
搭乗手続きのリミット15分前。
成田を利用したことがある方はわかると思うが、第3ターミナルまでのルートは、「陸上トラックのレーン」を模した白線で続いている。
スーツケースを抱えて、駆けた。
駆けた、駆けたよ、約10分。
搭乗口の看板が見えた。
「ただいまの時刻をもちまして、
搭乗手続きは終了となります」
手続きを終え、まだ息を整えている僕を追いかけるように、
アナウンスが流れた。
機内に入る。
席につくための小渋滞が起きている。
座る人の「頭」に注意しながら、
バッグを頭上の「荷物入れ」に押し込む人。
手前の席の人に「すみません」と
頭を下げながら奥の席に着く人。
席に着くまでに必要な譲り合いを経て、180名分の機内の席は、
ほぼ全てが埋まっていたと思う。
たまたま同じ飛行機に乗り合わせた人たち。
ほとんどの人は、
あの「陸上トラックのレーン」を通ってきた。
別々の理由だけれど、同じ方向に向かう。
日常の移動では、
意識しない親しみを覚えた。
それが、旅のチカラなのだろうか。
やっっっと、糸島に行く道の
スタート地点に到着です。
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