[言葉の繊維] 11.稲留公民館 (糸島の言葉)
映画の撮影現場には、人を結びつける力があるように思う。
もともと知り合いかと思うくらい盛り上がって話をされている人たちが、
さっき会ったばかりだったりする。
エキストラに参加されている方は、
ほとんどは糸島市、もしくは、福岡県の方で
関東から来ていた方もいた。
「糸島の映画をつくると聞いたので」
「友人の手伝いをしたくて、仕事を調整して来たんです」
「糸島で勤めていて、趣味で劇団をしています」
「移住してきました。糸島が変わってきたのは最近なんですよ」
「糸島生まれです。東京から来られたんですね。
あの場所は行きましたか?」
ここで出会った方は翌日の撮影で会えた方もいるし、
さらに新しい出会いにつながった方もいる。
僕が入れなかった「ひめしま渡船直売所」の現場について教えてくれた。
東京の地名を福岡の役者さんが話す場面があり、
イントネーションの正確さを追求する場面があったという。
そういうことが、ここでも起きた。
役者さんがセリフを言う。
「…」
僕は違和感を感じないのだが、
ここは物語の舞台である糸島であり、
集まっているほとんどは地元の方々。
イントネーションが少しだけ違うらしい。
はじめは、遠慮がちに周りを見渡す人。
すこしずつ、口の隙間から言葉があふれていく。
その言葉は「糸島に生きる人の温かみ」を帯びているようにも思えた。
役者さんと地元の方たちとが確認しあう。
「糸島の方々全員が監督です」
監督はそう言っていた。
「映画「糸」が描く人間ドラマがあることと同じように、
糸島で生きる人それぞれにドラマがある」
糸島の方の言葉をかりて、明日につなごう。
(写真は糸島のとある風景)
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