自民党の派閥
自民党には、所属国会議員で形成される派閥がいくつかあります。
かつては、首相候補が、自民党総裁選に備えて派閥を作っていたといわれていました。現在はそれだけでなく、幅広い政治観をもつ自民党のなかで、より政策に対する考えの近い議員の集団としての役割も果たしています。
もっとも、派閥のボスが、自分たちの党内での力を高めるため、選挙応援などを「えさ」にして国会議員を派閥に集めているような面も否定できません。大臣や党の重要ポストが派閥の勢力にもとづいて決められている点もあると言われます。
自民党の派閥の特徴は、組織化されている点です。派閥のナンバーワン(「領袖」といったりします)が「会長」になり(両者が異なる場合もあります)、そのもとに会長代行、副会長、事務総長、事務局などが設けられていたりします。
2022年5月現在の自民党の派閥は、およそこのような感じです。
安倍派 正式には「清和政策研究会」、略して「清和会」。現在の第一派閥。岸信介元首相の系譜とされ、他派閥のなかでも右寄りスタンスとみられることが多い。森・小泉・安倍・福田元首相を輩出。2021年、事実上のリーダーだった安倍元首相が正式に会長に就任し、細田派から安倍派へ。西村康稔前コロナ担当相などが所属。
茂木派 正式には「平成研究会」。かつて、竹下元首相が結成した経世会が源流。現在の第2派閥。1990年代は橋本・小渕首相を輩出したが、その後は首相の輩出はない。政策的にはややリベラル、あるいは現実主義的といわれることもあるが、はっきりはしない。会長の茂木氏は自民党幹事長。加藤勝信前官房長官などが所属。
麻生派 正式には「志公会」。第3派閥。下に出てくる宏池会の流れをくむ議員も多い。麻生元首相が立ち上げ時からリーダー。必ずしも政策的スタンスがはっきりしているわけではない。河野太郎前ワクチン相などが所属。
岸田派 正式には「宏池会」。第4派閥。岸田首相が会長。1960年代に首相を務めた池田首相の派閥の直系とされ、「保守本流」と言われることも多い。政策的にはリベラル寄りとも言われることもしばしば。分裂を繰り返してきた歴史がある。平井卓也前デジタル相などが所属。
二階派 正式には「志帥会」。中曽根元首相の派閥の流れをくむ議員が多いとされる。現在は二階元幹事長が会長。現在自民党に入党した、元民主党の細野豪志元環境相は、入党以前から派閥に所属していた。二階氏の幹事長時代に派閥勢力が大きく拡大。
森山派 正式には「近未来政治研究会」。中曽根派→山崎派の流れをくむとされる。昨年までは石原伸晃元経済担当相が会長の「石原派」だったが、衆院選の落選により、森山裕元農水相が会長に就任。他派閥と比べ勢力は小さい。
派閥以外にも、菅前首相に近い「きさらぎ会」「ガネーシャ会」、政界引退した谷垣元総裁に近い「有隣会」などがあるとされています。また、無派閥議員が80名以上いるとされています。