「ガザ・モノローグ2010」その26

26.マフムド・ナジェムさん 1994年生まれ アッシュシェイカーラドワン

ガザの道が初めてきれいになって、紙きれもダンボールの切れ端もなかった。電気が使えなくなったから、みんながパンを焼くために紙切れを集めたんだ。でもママはパンを焼きたくなかったから、僕にオーブンからパンを運んでくるよう言った。パンのためにオーブンの前に並んだ人の列は、ガザから西岸地区まで伸びた。1パックの半分のパンのために、みんな自分の番が来るまで8時間も待ったんだ。

その時、パレスチナのロケットランチャーが立ち上がって、1秒もしないうちに、イスラエルの飛行機が空爆を始めた。その場にいた人たちは蜂の子を散らすように走り始めて、すぐに救急車が来た。みんなばたばたと死んでいって……、怪我してる人もいた。僕はショックで立ち尽くしていたんだけど、通りにいた人は僕が無事でよかったね、と言ってくれたんだ。

それから、僕はひとかけらのパンも持たずに家に帰った。ママは僕を叱ったよ……。ママはどうして僕がパンを持って帰らなかったのか、今も知らないんだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?